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2021.12.10 06:30

米ファストフード各社が、英国市場にチャンスを見出している理由

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実際、欧州の外食業界売り上げで最上位に名を連ねるレストランの半数は、QSR(クイック・サービス・レストラン)とも呼ばれるファストフードのセグメントでビジネスを行っている。そして、こうしたセグメントは米国ブランドによって支配されている。欧州連合(EU)の上位95ブランドによる総売上の45%は、わずか12の米国企業で占められている。
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注目すべきは、英国の外食業界が、厳格なコロナ対策で苦境に立たされているだけでなく、米国と比べて、より深刻な労働者不足とサプライチェーン問題を抱えていることだ。その原因はEU離脱だ。

とはいえ、ファストフード市場は利便性を重視しているため、そうした問題の影響は比較的少ない。ただし、「利便性」の定義は、英国と米国とは少し違う。英国では、デリバリーが中心で、ドライブスルーが少ないのだ。

デリバリーは、コロナ禍の前からすでに好調だったが、さらに急拡大を遂げている。調査会社CGAが2021年4月に発表した「Hospitality at Home Tracker」の分析によると、2021年2月における英国のデリバリーとテイクアウトの合計売上は、前年2020年同月比で317%増だった。注文数は1960万件に達し、2020年2月の910万件の2倍を超えた。
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ラックによれば、こうしたデリバリー需要の高さが、ウィング・ストップが市場で確固たる地位を築いた一因だ。ウィング・ストップは2021年11月、英フードデリバリー企業のデリバルーが選ぶ「UKレストラン・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。

とはいえ、英国市場に存在する「空白地帯」は、チキンウィングといった料理のジャンルや、ファストフードといったセグメントに頼っているわけではなく、強力なビジネスモデルに基づいているようだ。

「英国市場は、EU離脱とコロナ禍の両方で悪戦苦闘を強いられている。米国が労働者不足にあえいでいるとするなら、英国はさらに輪をかけてひどい。ホスピタリティ業界では、必要な人員のうち10%が欠員状態であり、業界にとっては悪夢が続いている」とラックは述べる。

「それがコストの上昇を招いている。従って、ビジネスモデルは、非常に回復力を備えたものである必要がある。市場の空白地帯を手に入れるのは、現状に最もうまく適応できる企業になる」

言うまでもなく、潤沢な資金も助けになる。だからこそ英国市場では、打撃を受けた独立系飲食セクターが復活する一方で、米国のさまざまな大手ブランドが急増とするという状況が見られているのだ。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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