こういう回答に対しては、「お金が全てじゃない」と反論の声があがることも少なくないが、現代社会においてはお金があるほうが欲しいものはたくさん買えるという事実もあり、冒頭で紹介した回答は、決して誤ったものではないだろう。
お金と無縁で生きている人などほぼ皆無であり、お金の話は避けるべきではない。それでは、お金に支配されることなく、幸せに付き合うためにはどうすればよいのだろうか?
「あったらいいな」を仕事にする
最近の子どもたちに将来なりたい職業を聞くと、必ず最上位にユーチューバーがくる。筆者も今年の9月からユーチューブチャンネルを開設したので、ようやくどのようにしてユーチューバーが収益を得ているのか、その仕組みを理解するようになった。しかし、これだけで食べていくのは相当ハードルが高いという印象も持った。
日頃から動画を見ている子どもたちからすれば、つくり手側にまわることでたくさんのお金を稼ぎ、生計を立てることに憧れるのももっともなことだ。その気持ちはわかるが、世の中の厳しさを知っている親からすれば、自分の子どもには経済的に安定した生活を送ってもらいたいので、ユーチューバーなど目指さないでほしいというのが本音だろう。
とはいえ、親の目から見て大変だと思うからといって、頭ごなしに否定するのもよくなさそうだ。
全米でロングセラーとなったジェームス・マッケナ、ジェニーン・グリスタ、マット・フォンテイン共著の「13歳からの億万長者入門」という本には、「たくさんのお金を手にしている人は、人が欲しいものを見つけ、若いうちから行動をしている」という一節があり、次のようなエピソードが紹介されている。
ある10歳の男の子が、自身のロッカーにつけるマグネットを店で探しても気に入るものがなく、自分でつくることにした。その後、自作したマグネットを販売してみると、家族の助けもあって、月に5万本も売れるようになった。
米国の子どもはこのような成功体験を記した本を幼少期から読む機会が多く、子どもの時に「こういうものがあったらいいな」を形にすることでお金を稼ぐようになった人が他にも数多くいるのだ。
確かに、名の知れた会社に就職して、既存の製品やサービスを世に出すことに従事して、日々安定した給料をもらうことも1つの人生の選択肢ではある。また、起業をしても多くの企業が事業を軌道に乗せられないまま廃業や倒産することを考えれば、リスクを取ることを軽率に推奨することは無責任といえる。
しかし、いまは安定しているように見える企業でも、10年後もそのままの状態にあるかはわからない。そのような観点からいえば、現時点で顕在化しているリスクだけを見て、全てを決めてしまうことは早計だ。
なので「こういうものがあったらいいな」という子どもたちの発想をいかにビジネスにするかという会話を、一緒にすることはかなり有益だろう。