アマゾンは、英国や欧州の街なかでの店舗展開を目指している。
英国では、レジを通過せずに決済できる生鮮食料品店「アマゾン・フレッシュ」を、今後3年で数百店舗オープンする予定だ。英国内の1号店は、2021年3月にロンドン市内でオープンしている。
現時点での店舗数は、ほんのひと握りだ。また、アマゾンのサイトで星4つ以上のレビューを獲得した人気商品を販売する新しいタイプの実店舗「4-Star」の1号店も、2021年10月にオープンしたばかりだ。しかし、同社は2024年末までに、直接経営するスーパーマーケットを英国各地で260店舗以上オープンしたいと考えている。2022年に60店舗、2023年と2024年にそれぞれ100店舗を展開していく計画だ。
内部文書を報じた「Business Insider」の記事によると、英国でオープンが計画されているアマゾンの生鮮食品店はすべて、レジのない無人決済だ。同社の野心的な店舗拡大計画は、英スーパーマーケット大手のテスコやセインズベリーズ、Co-opに追いつくことを目的としている。
アマゾンはまた、ドイツやスペイン、イタリアでも生鮮食品を扱うコンビニエンスストアを2022年に多数オープンすることに関心があると見られている。とはいえ、こうした野心的な目標は、予想よりも達成が難しいようだ。今のところ、年内にオープンが予定されていた26店舗中、実際に営業を始めたのは6店舗しかない。
目標を高く設定するのがアマゾン流
アマゾンが大きな目標を立てているからといって、驚きはない。それはいつものことだ。英国で一握りのアマゾン・フレッシュをオープンしたところで、経済的にはあまり意味がない。ただし、他の多数の製品カテゴリーと同様の方法では大きなインパクトを与えることができなかったセクターを、今後はより広範囲に構築していくという目的がある場合には、話が違ってくる。
そうした意図がある証拠に、アマゾンは2021年7月、実店舗の経営担当としてテスコの元幹部トニー・ホゲット(Tony Hoggett)を招き入れた。ホゲットは2022年1月、米シアトルに移って、実店舗担当の上級副社長に就任する予定だ。そして、世界全体の消費者向けビジネスを統括する最高責任者デイブ・クラークの下で働くことになる。
ホゲットは、テスコで30年以上の経験を積んだベテランで、英国とアジアで重要な地位を歴任してきた。2018年にグループ全体の最高執行責任者(COO)に就任し、2021年4月には最高戦略責任者(CSO)ならびに最高イノベーション責任者(CINO)に任命されたばかりだった。
つまり、ホゲットがテスコに離反したのは、アマゾンにとっては大きな一撃だったわけだ。