「イノベーションの最大の源泉」である共感力を身につけるには

マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ(Photo by Sean Gallup/Getty Images)

マイクロソフトのCEOであるサティア・ナデラは、ハーバード・ビジネス・レビュー誌による最新インタビューで、「イノベーションの最大の源泉は何だと思いますか?」という質問を受けた。

ナデラの答えは、誰にとってもかけがえのない教訓となるものだ。彼は次のように述べた。

「すべての人は生まれつき、他者の立場に立ち、彼らの視点で物事を見る基本的な能力、すなわち共感力を備えている。これこそがデザイン思考の核心だ。『イノベーションとは、市場のなかにある、具体化も充足もされていないニーズを満たすことだ』と言われるが、これは究極的には、具体化も充足もされていない人々のニーズ、あるいは、人々の集まりである組織のニーズを満たすことにほかならない。また、単なる共感ではなく、深い共感をもつ必要がある。私の考えでは、すべてのイノベーションの源泉は、すべての人が備えるもっとも人間的な性質、すなわち共感だ」

ここから、当然の疑問が湧いてくる。あなたに共感力はあるだろうか? 他者の立場に立って、彼らの視点で物事を見ることができているだろうか?

一見、ばかばかしいくらい簡単なことに思えるが、データを見るかぎり、実際にはきわめて難しいようだ。数千人の人々を対象におこなわれた、「共感をもって話を聞く方法を知っていますか?」と題したテストでは、およそ3人に1人が不合格で、満点を取れた人は約20%しかいなかった。共感力は、そう簡単に習得できるスキルではないのだ。

イノベーションであれ、顧客からの苦情であれ、社員が直面する問題であれ、新たな考えに出会った時に、その考えを相手の視点で捉えることは、きわめて難しい。

守りの姿勢になったり、相手の提案を、従来のやり方への批判と捉えたりする方が、はるかに簡単で自然な反応なのだ。例えば、従来の仕事の進め方として、顧客の苦情を解決に導くための複数のステップがあるとする。どこかのタイミングで、私たちはそれを見て、こんなにたくさんのステップは要らないと思うかもしれない。それでも、顧客からの電話で、「3つもステップがあるのは多すぎる」と言われたら、反発して、従来のやり方を擁護するのが自然な反応だ。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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