『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(栗田路子、プラド夏樹、田口理穂、冨久岡ナヲ、片瀬ケイ、クローディア―真理、田中ティナ著、光文社新書刊)では、海外在住の7人のジャーナリストたちがコロナ禍での各国対応を読み解く。
23カ国中最下位 日本のコロナ対策評価
2020年5月、シンガポールの調査会社が23の国と地域に対してそれぞれの指導者のコロナ対策への満足度を聞いた結果を発表した。その調査によると、日本国民の満足度は最下位。当時の首相・安倍晋三氏に対する評価が政治、経済、地域社会、メディアの各分野において最下位で、総合指数も最低だった。
緊急事態宣言に伴う休校、休業、外出自粛は日本人にとって大きなストレスであり、先行きの見えなさから来る不安はそのまま政府への不満に還元され、このような結果になったのかもしれない。しかし、同様のロックダウンを敷いていた他国に比べて日本人の自国コロナ対策に対する評価は突出して低い。なぜなのか。
本書の著者の一人で、企画発起人であるベルギー在住のジャーナリスト・栗田路子さんは、他国の様子をテレビを通して知る時、次のように感じたと話す。
“未曽有の危機に、それぞれの国のリーダーたちが市民に向ける姿勢や言葉に圧倒された。それは良い意味でも悪い意味でも、日本では感じることのできないほどの熱量を持っていた。”
誰かに用意してもらった原稿話読み上げるだけ、標語が書かれたフリップを使ってもっともらしく説明するだけ、そうした日本の政治家とは、彼らは明らかに違っていたのだ。
本書では、イギリス、フランス、ドイツ、ベルギーなど各国に日本人ジャーナリストとして、かつその地の一市民として長く住む人の目を通して、コロナ禍の国を率いたリーダーの物語が記されている。その記録は、日本のメディアを通してだけでは知りえない実情を伝える。
アメリカ在住ジャーナリストが語る「トランプだからできたこと」
ドナルド・トランプ元大統領
例えば、元アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏についてだ。彼の過激な言動からは、コロナ禍に適切に対応したリーダー像は読み取れない。医療物資の調達にも真剣に取り組まず、州の判断によって行われるロックダウンを非難し、マスクの着用を拒否し続け、大規模な政治集会を各所で開き、「コロナは中国のせいだ」と責任逃れの言葉や、「(ウイルスは)消える。ある日、奇跡のように、消えてなくなる」などコロナ対策を軽視するようなことも言っている。
はたから見ればいいとこなしのトランプ氏だが、こんなトランプ氏だからこそ実現できたこともあると、アメリカ在住のジャーナリスト・片瀬ケイさんは指摘する。