ジェンダーギャップを見つめ続けた女性投資家が越えた、「固定概念」の壁

SDGインパクトジャパン 小木曽麻里(撮影=小田駿一)

上下関係、ジェンダー、社内外の枠組みなどに縛られずに、チームや組織、あるいは業界に多くの実りをもたらした女性たちは、何を考え、どう行動したのか。
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Forbes JAPANでは、これまでの考え方や既存のシステムを超えて活躍する女性にフォーカスした企画「Beyond Systems」を始動。約3カ月にわたり、翻訳コンテンツを含めたインタビュー記事を連載していく。

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2021年、一躍脚光を浴びつつあるインパクト投資。社会や環境に対してポジティブな影響を与える投資のことだが、10年近くにわたってその研究を重ね、国内でいち早くインパクトファンドを立ち上げた女性がいる。SDGインパクトジャパンのCoCEO 小木曽麻里(こぎそ・まり)だ。

大学卒業後、日本長期信用銀行から世界銀行へ移り、2017年には笹川平和財団で国内初のジェンダーレンズ投資ファンドである「アジア女性インパクトファンド」を組成。現在は、海外ファンドと協働で3つのESGファンドを組成している。

「成長できないと思ったら、環境を変える」。そんなモットーを持つ小木曽は、自らの考え方をどう変え、どう固定観念を乗り越えてきたのか。

「サステナブルなんて言っちゃいけない」


大学を出た小木曽が日本長期信用銀行(長銀)に入行したのは1990年代。バブル崩壊直後だったという。もともと環境問題に興味のあった小木曽は、金融×サステナビリティの領域で何かできないかと考えていた。

しかし当時はCSRという言葉も一般化しておらず、「金融機関の人がサステナブルなんて言っちゃいけない」という雰囲気すらあったという。

ジェンダーの壁も厚く、女性が社会で働けるだけでありがたいという風潮。出世していくのは、時間を忘れて長時間働ける男性ばかりだった。

八方塞がりのように聞こえるが、小木曽が本当の「壁」を意識したのは、このときではない。7年間勤めた長銀を退職した後、留学を経て米国ワシントンにある世界銀行で働くことになったときだ。

「高い壁がそびえ立っていたのは、私自身の心の中だったということに気づきました。それまで、社会に適合するためにはこうあるべきだという固定観念でがんじがらめになっていたんです。自分で思っていたより、常識に縛られていました」

その固定観念は、やがてがらがらと崩れ去ることになる。
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文=石川香苗子 写真=小田駿一 編集=松崎美和子

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