消費者意識の根本的な変化を裏付けるのが、クイニピアック大学が行った最新の世論調査の結果だ。それによると、米国民の81%は、自分の生活が近いうちに以前の状態に戻ることはないと考えている。二度と戻らないと確信している人の割合も、4人に1人に達した。
また、ファースト・インサイトが実施した消費者を対象とした調査では、回答者の53%が、購入を検討している衣服を試着室で試すことに安全上の懸念を覚えると述べ、靴の試し履きについても49%が不安だと回答した。さらに、化粧品を店舗で試すのは安全ではないと答えた人の割合は71%に達した。また、実店舗で店員から接客を受けることが不安だと答えた人は、前回の調査から3割増の56%に達した。
とはいえこれは、小売業界にとって必ずしも悪い情報とは言えない。伸び率は1桁台と、コロナ禍がピークに達していた時期と比べると下落しているものの、オンラインショッピングが成長を続けているからだ。
一方、すでにコロナ禍との戦いでかなりの傷を負った小売業界は、今後も長く続くとみられる「塹壕戦」に身構えている。「多くの事業者は、製品の価格上昇と供給不足が、あと1年前後は続くと見ている」と、ウォールストリート・ジャーナルの記事は伝えている。
1年前、消費者が何より気にかけていたのは店舗の衛生状態で、最も気になる要素として「価格」を挙げる人は4人に1人しかいなかった。だが、状況は様変わりした。最近のある調査によると、どの店で買い物をするかを決める際に最も重要な要素として、8割の人が価格を挙げた。
最後に指摘しておきたいのは、「米国の消費者はそもそも積極的に消費をするムードにない」ことが複数の調査で明らかになっている点だ。広告代理店モメンタム・ワールドワイド(Momentum Worldwide)による、消費者3200人を対象とした調査では、全体の76%が「どちらかと言うと、物よりも体験に金を使いたい」と答えている。
また、ファースト・インサイトの消費者調査でも、回答者のうちワクチン接種を拒否している人に対し、「レストランや店舗への入店の権利を得るためならワクチン接種を検討するか」と尋ねたところ、90%が検討しないと答えた。
インフレが収まらず、失業率が高止まりし、なおかつ需要が停滞するという悪夢のような状況は、「スタグフレーション」と呼ばれる。現在の状況は、従来の定義とは一致しないかもしれないが、小売業者にとってはもはやスタグフレーションも同然と言えるかもしれない。