就職氷河期世代といえば、バブル崩壊後の1993年頃から2005年頃までに大学等を卒業した人たちで、希望どおりの就職ができず、正社員を望みながらいまでも非正規のままというケースも多い。
内閣府によれば、大卒就職率でみると、就職氷河期が69.7%(その期間を除く1985年~2019年の平均は80.1%)と他の時期よりも10%ポイント以上低くなっている。そこで、厚生労働省もこの世代を積極的に支援しはじめた。
一方で、新型コロナの感染拡大を防ぐために飲食店での休業措置などで仕事を失った人たちにも、行政がしっかりサポートすべきとして、さまざまな支援策が用意されている。
自分のキャリアに悩んで起業
そんななか、LINEで転職相談を受けるスタートアップ「コンパス」が注目を浴びはじめた。きっかけは、自治体の就労相談事業で同社のサービスが急速に使われ始めたことだ。
今月18日、コンパスは、新生企業投資と社会変革推進財団が運営する「はたらくFUND」や、「マネックスベンチャーズ」から、新たに2億円の資金調達をしたと発表した。2017年に同社を創業し代表を務める大津愛に、起業に至った経緯を聞いた。
10月18日に投資ファンドらとともに記者会見した大津 愛(左から2人目)
前職はひきこもりを支援するNPOでキャリアコンサルタントをしていた大津は、ひきこもりやワーキングプアと呼ばれる人たち、そしてワーキングマザー(ワーママ)たちからの相談を受けていたという。
「相談にこられた方の約7割が職を得ることができ、3割以上が正社員として就職できたことに驚きました。彼らや彼女たちは、行政の支援や民間の転職サービスの枠の外にいるので、サポートすると大きな効果があることが判ったのです。
しかも、こういった人たちは内気な性格な方も多いので、最初の一歩がなかなかうまく踏み出せません。そこで、オンラインでの相談が有効だと考えるようになりました」
大津は、大学を卒業後、得意な法人営業の仕事で、大きな案件をいくつも取るほど活躍していたという。ところが、結婚して子育てに入ると、仕事との両立が難しくなった。転職をしようと、保育所への迎えにギリギリ間に合う19時までに終わる営業の仕事を探したがなかなか見つけることができなかった。
「この頃の私は、仕事にやりがいを感じていましたが、自分のキャリアについてすごく悩んでいました。子どもの送迎のために仕事を切り上げられない、土日も休めない、オフィスの環境も悪い。そんな状態でずっと仕事を続けられるのかと不安を感じていたんです。あの頃の私と同じような悩みを抱えた人も多いのではないかと思い、事業を立ち上げました」
同社は、仕事で悩んでいる人が、無料で国家資格を持つキャリアコンサルタントに相談できる「チョイス」というLINEのチャットボットを展開している。会員になると、LINE上で相談したり、オンライン面談の予約ができたりする。