物理効果から人間研究へ。資生堂の新プロジェクトリーダーが考える化粧品の未来

資生堂 中西裕子(撮影=小田駿一)


多様な選択肢を提示したい


国や時代が変われば、化粧品に対して抱く思いや意味も変わる。さまざまな「人間」を知り、それぞれの美しさへのアプローチを探求すること。それが、いまの中西が任されている仕事だ。
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普段から外国人の研究員とのやりとりや、それぞれの「美しさ」について語りあう機会も多い。

「肌の保湿といえば、日本では化粧水ですが、欧米では化粧水なしのクリームが主流だったり、韓国では洗顔料にこだわる人が多くて平均3種類も持っていたり、中国では人気のある香りが他の国ではあまり好まれなかったり。国や地域によって化粧やスキンケアに対する意味付けや感じ方が違って面白いんですよね」



機能性を重視する化粧品開発の現場から、人の感性や美しさそのものの研究へと活躍の場を広げてきた中西。化粧品業界の未来について訊ねてみたら、こんな答えが返ってきた。

「まず、従来の『これが美である』と定義された考え方や、『正解は1つだけ』という価値観は色褪せ、さまざまな美しさの定義が生まれてくるのではないでしょうか。メーカーが美を定義して消費者を誘導する従来のスタイルではなく、『その人自身の美しさがある』『どの美しさも正解である』といった捉え方が主になると思います。

化粧品について言えば、より個人に寄った形での開発や、よりスピード感をもったトレンドの追求や商品化、SDGsを始めとする環境への配慮など、今まで以上に利他的な感覚が、商品自体に入ってくるのではないでしょうか」

最近では、フェムテックなど女性のQOLを向上させるための取り組みが世界中で広がっており、LGBTQについてもオープンに議論されるようになるなど、性的マイノリティに対する認識も浸透しつつある。「化粧品は女性だけのものではない」という価値観も、今後はさらに広がっていくのではないかと中西は言う。

「大切なのは、さまざまな考えや背景を持つ人それぞれに合った選択肢が、きちんと世の中に存在していること。私たちはこれからも、それぞれの美しさの定義に対してアプローチできる化粧品(選択肢)を用意できるような研究開発を進めていきたいと思っています」

文=松崎美和子、アステル 写真=小田駿一

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