地域版である「アジアのベストレストラン50」は今年の春に発表されたが、世界を網羅するこちらは、2019年6月のシンガポールでの開催以来の発表。コロナ禍前の投票結果に、この1年余りの状況も反映して作成された。
開催地アントワープでは、マスクの着用は必須ではなく、街は比較的平常に戻っていたが、10月からは店内で飲食する際にはワクチンの接種証明書や48時間以内の抗体検査の陰性証明の提示が必要になっている。今回の各種イベントも、その基準に則って行われた。
40カ国からシェフが集まり、 120のインターナショナルメディアなど、合計700人以上が参加した授賞式は、アントワープ駅から程近いフランダースミーティング・コンベンションセンターが会場となった。
今回1位に輝いたのは「ノマ」のレネ・レゼピシェフ。5回目の首位に際し、「受賞の秘密を聞かれるが、実は79もあるのです」とコメント。79とは、実は働いているスタッフの人数で、チームがあってこその受賞だ、ということを強調した。
世界のベストレストラン50、1位に選ばれた「ノマ」のスタッフたち
そのノマのクリエイティブチームを束ねるのは、日本人の高橋惇一氏だ。「9年間ノマで働いてきて、初めての授賞式。ノマが初めて受賞した際には、テレビで見ていた。その舞台に自分が立っているのが信じられない」と、感動を語った。
「レネの要求レベルはとても高いので、毎日クリエイションをしても、納得のいくものが生まれずに苦悩することも多い。でも、常により良いものを追求する姿勢をチームで共有し、平等にディスカッションできる関係性が心地よい。ここから、いずれ皆独立するなど、旅立っていくと思うが、ずっとノマというファミリーであることには変わりない」とその求心力を称えた。
日本からは3店がランクイン
日本からは、前回同様の11位に「傳」が入賞。ほか、前回の22位の「NARISAWA」が19位に入ったほか、「フロリレージュ」川手寛康氏が39位と、初のトップ50入りとなった。
「傳」の長谷川シェフは、「今回は、ランキング発表だけではなくアワードを開催出来たこと自体にとても意味があると思います。これからのレストランは、人と人の繋がりをより大切にして、皆でより良いあり方を考えていくようになるのでは。また、親友でライバルでもあるフロリレージュの川手さんがいたから僕はここまで来れました、とチームとしての来年は世界中を料理して回るつもりです」とコメント。
名前の上がった「フロリレージュ」川手シェフは、「ここ数年、何か新しいコンセプトに取り組んだり、大きな投資など特にしていませんが、逆に地道な作業や堅実な仕事を通して、少しずつ順位が上がり、入賞に繋がったのではないか」と語った。