アキレスは今年、国産では最大級となる大型水害救助艇「LCT-670」を開発した(現在船舶検査申請中)。一番の特徴は、最大20名の避難が可能な浮力を有し、車椅子やストレッチャーでも直接乗船できることだ。
実はアキレスは60年前からゴムボートの製造、販売を行っており、2011年の東日本大震災や2018年の西日本豪雨など、大規模災害が発生した際には、概ね同社のボートが出動している。
アキレス社長室の森宏生(左)、小泉貴裕(右)
今回新しく大型水害救助艇を開発した背景について、アキレス社長室の森宏生は次のように語る。
「2019年の台風19号で千曲川が氾濫した際に、体の不自由な方の避難が困難だったという事例を聞きました。車椅子やストレッチャーでそのままボートに乗るのは容易いことではありません。また従来の救助ボートは6人乗りが基本ですが、一刻を争う災害時にその小さいボートで何往復もしていては、待つ間に命を落とす可能性がある。そうした課題を解決できないかと思案していた時に、国内の消防機関が海外製の大型救助艇を導入したことを受けて、私たちも本格的に開発に乗り出しました」
そもそも同社は、ゴムやプラスチックなどの素材を開発し、それらを生かした製品を販売する会社だ。ウレタンフォームのマットレスなどでは、国内トップシェアを誇っている。またエアーテントや抗ウイルス性のフィルムなど、医療・防災の現場でも同社の技術を生かした製品が多く用いられている。
特に今回のコロナ禍では、アキレスの防災製品が多くの場面で活用されている。例えば、コンビニエンスストアのレジや飲食店などで飛沫防止のための仕切りとして張られている透明のビニールシート。また、医療用テントは今年、例年の販売実績の10倍を記録しているという。
なかでも、PCR検査時の感染対策を徹底する目的で新たに開発された、感染症対策用の陰・陽圧式エアーテント「NPI-66」に大きな注目が集まっている。
内部が天幕で仕切られている感染対策用テントNPI-66
このテントの特徴は、あらかじめテント内が天幕で2つのゾーンに分けられていることだ。検査を行う医療従事者と検査を受ける側に仕切りを設けることで、医療従事者の検査時の飛沫感染リスクを低減する。
天幕や床布は二重になっているため、取り外して廃棄・交換が可能で、テント一式を買い替える必要なく衛生的な環境を保つことができる。
また、二重天幕で仕切ることで内部の気圧や空気の流れをコントロールしやすく、1時間に12回以上の換気が可能だという。
開発の背景について、アキレス社長室の小泉貴裕はこう語る。
「もともとNPI-66を含むNPシリーズは感染対策用テントで、2002年からのSARSの流行を機に開発したものでした。新型コロナウイルスの感染流行初期には、従来のモデルを使ってPCR検査が行われていました。しかしテント内をパーテーションなどで区切る必要があるというお客様の声を聞き、テント内に間仕切りを加える案を考え、3カ月ほどで改良モデルの発売に至りました」