パレード参加者らは、膝を曲げない「グースステップ(ガチョウ歩き)」というスタイルの行進を行った。ナチスドイツや旧共産主義諸国の軍隊が取り入れた行進だ。9日の行進をみると、正規軍のパレードで見せる、足を90度に上げて弾むように行進する姿こそなかったが、きちんと統制の取れた行進だった。北朝鮮を長く分析した自衛隊の元幹部は「行進で一番難しいのが、横の列のそろえ方。わずかな歩幅や速度の違いでも乱れが出る。9日の行進を上空から撮影した映像をみると、中隊ごとに、きちんとした箱形になって行進していた。腕の振り上げ方もきちんと一致していた」と語る。
日米韓は情報衛星の写真などを通じ、9月から平壌近郊の美林飛行場でパレードの練習が行われている様子をつかんでいた。自衛隊元幹部は「あれだけの行進をするためには数カ月の訓練が必要ではないか。地域ごとに少人数の練習をしたうえで、直前に大規模な訓練をした可能性もあるが、大規模な訓練にはそれ相応の時間がかかる」と語る。映像でみると、9日のパレードの参加した人々は皆30代くらいに見えた。労農赤衛軍は、軍を除隊して国営企業などで働く人々で組織されている。30代の人もいるだろうが、主力は50代という証言もある。少なくとも、もう少し年齢層が多様になっているはずだ。普段、行進の訓練を受けている軍人たちに労農赤衛軍の制服を着せて参加させた可能性は小さくない。
非常防疫中隊(労働新聞ホームページから)
また、行進では「祖国の安全と人民の安寧を担保する非常防疫戦線の戦闘兵」と紹介された全身オレンジ色の防護服を着た非常防疫中隊が登場した。自衛隊の元幹部は「医療現場で使うものより強靱な、陸自の化学防護衣に似た装備ではないか」と語る一方、「防護隊のような専門性のある部隊で使うならまだしも、民間防衛組織や予備軍で使うのは非効率ではないか。武器も扱いにくいし、防毒面だけを使うのが普通だろう」と語り、「非常防疫中隊」が労農赤衛軍所属ではない可能性が高いと指摘した。
トラクター(労働新聞ホームページから)
また、パレードでは多連装ロケット砲を牽引するトラクター、有事の際の消火活動に従事するとみられる消防車も登場した。自衛隊の元幹部はトラクターについて「実際、多連装ロケット砲を牽引する能力があるから無意味ではない。でも、燃料も整備も足りない北朝鮮が十分使いこなせるのか」と指摘。逆に、北朝鮮の物資不足を浮き彫りにしていると説明する。脱北者も「平壌ですら、消火栓を見たことがない。消防車が消火活動で本当に活躍できるのか信じがたい」と語る。
消防車(労働新聞ホームページから)