第一次産業への貢献。京都のシェフが考える「料理人にできること」

「チェンチ」のオーナーシェフ、坂本健氏

2021年からトップ100まで発表されることになった「アジアのベストレストラン50」で、京都にあるイタリアンレストラン「チェンチ」が91位にランクインした。

シェフを務めるのは、京都生まれ京都育ちの坂本健氏。京都スタイルのイタリアンで一世を風靡した「イル・ギオットーネ」の笹島保弘オーナーシェフの右腕として、15年間研鑽を積み、2014年、京都・岡崎に「チェンチ」をオープン。瞬く間に予約の取りにくい人気レストランとなった。

築100年の民家を改装しながらも、イタリアの田舎家を思わせる店内で、坂本さんは、一つ一つの素材を大切にしながら繊細にその味を重ねて作り出す、洗練された料理を供する。



「料理ってやればやるほど、業の深い仕事だなと思うんです。大げさではなく、命をいただいて、初めて仕事が成り立つ。この業界に入ってすぐの頃は、仕事を覚えるのに精いっぱい、仕込みをこなすだけで時間が過ぎていく、そんな感じでした。でも最近は、料理人として何かできることがあるはずだ、と考えることがものすごく多くなりました」

そんな思いから、2019年2月、サステナブルな海と明るい食の未来を目指す「シェフス フォー ザ ブルー」の佐々木ひろこ氏をチェンチに招き、京都の料理人を集めた講習会を開催した。海や漁業の現実を知り、アクションを起こすためだ。

「それまで、海の危機感から遠かった料理人たちからも、『この魚大丈夫なん?』などと会話の端々に上がるようになり、意識改革の糸口になったのではないかと思います。盛り上がったその火を絶やさないようにと取り組みを続け、この9月半ばに「シェフス フォー ザ ブルー京都」として正式に発足が決まりました」と坂本さんは言う。

メンバーは、顧問に老舗料亭「菊乃井」の村田吉弘氏を迎え、「祇園さゝ木」佐々木浩氏のような重鎮から、フレンチ、中国料理、イタリアン、日本料理の若手までと多彩だ。これからは1カ月半に1回くらいのペースで勉強会を開いていくという。


近畿大学の水産研究所を見学

チェンチの勉強会の後、ほどなくして、門上武司氏(雑誌「四季の味」の編集顧問)の主催による、養殖魚をテーマにしたランチ会が開かれた。使われたのは和歌山「大瀬戸水産」の鯛。これが実に美味しいいものだったという。大瀬戸水産は「養殖魚・生産情報公表JAS規格」第一号を取得し、“魚ファースト”を掲げ、自然環境や生態系に負担がかからない養殖を心がけている会社だ。
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文=小松宏子

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