経済・社会

2021.09.03 16:30

テキサス州の「中絶全面禁止」に出会い系大手Match.comらが反発

Shutterstock

Shutterstock

テキサス州では9月1日、妊娠約6週以降の人工妊娠中絶を原則禁止する、全米で最も厳しい中絶禁止法が施行された。バイデン大統領や、民主党の議員や人権団体らは、この法律が女性たちの権利を著しく侵害するものだと抗議しているが、米国で最も人気のあるデートアプリの「Match」と「バンブル(Bumble)」も、この法律に反対している。
advertisement

米国最大の出会い系サイト「Match.com」を運営するマッチグループのCEOのシャー・ドゥバイ(Shar Dubey)は、2日の社内メモで、この新法の影響を受ける社員のための基金を設立したと発表した。テキサス州ダラスに本社を置く同社は、社員が中絶を行うために州外に出なければならない場合、その社員と家族の費用を負担すると述べている。

また、テキサス州オースティンに本社を置く出会い系アプリのバンブルも1日、テキサス州で中絶サービスにアクセスしようとする人々を支援するための基金を設立すると発表した。バンブルは女性が主導権を握ることで知られるデートアプリで、米国で2番目にダウンロード数が多い出会い系アプリとして知られている。

同社は、声明の中で「テキサス州の時代に逆行する中絶法と戦う」と宣言し、人々を支援していくと述べた。
advertisement

テキサス州は税金が安く、物価も安いことから、ビジネスフレンドリーな州として知られており、テスラやアップル、オラクル、ヒューレットパッカードなどの企業がオフィスを開設したり、本社を移転したりしている。しかし、最近の世論調査結果は、テキサス州の新たな法律によって、優秀な労働者が失われる可能性を示唆している。

今週発表されたPerryUndemの世論調査のデータでは、大学教育を受けた労働者の3分の2が、妊娠6週目以降の中絶を禁止している州では仕事をしたくないと述べていた。

マッチグループのCEOのドゥバイは、「私は25年以上前にインドからアメリカに移住したが、女性の生殖に関する法律がインドを含む世界の国よりも後退している州に住んでいることにショックを受けている」と2日の社内メモで述べていた。

レイプによる妊娠でも中絶できない

「この非常に懲罰的で不公平な法律の危険性を、誰もが理解しているはずだ。自分たちが暮らす州が、女性の権利を大きく後退させる決定を行ったことを、私は憎んでいる」と彼女は語った。

テキサス州の新しい妊娠中絶法は、5月にグレッグ・アボット知事によって署名されていた。この法律は、「ハートビート法」とも呼ばれ、超音波検査で胎児の心音が探知できた場合、つまり妊娠6週目以降の中絶を違法とするものだ。

しかし、多くの女性はこの時期に妊娠を自覚できず、レイプや近親相姦による妊娠も例外とならないことから、事実上「中絶の全面禁止」と捉えられている。また、専門家は、新法によって約85%の中絶が違法になると述べている。

さらに、この法律は、被害を受けていない人でも、「私的訴権」に基づいた訴追が可能で、米国人であれば、居住地を問わず、中絶を行った当事者やその家族、医師たちに対して民事訴訟を起こし、最大1万ドルの損害賠償請求を行うことができる。

編集=上田裕資

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事