インテリアはどうだろう。シルバーとブラックの2色で構成されたダッシュボードは、最新のアウディらしいシックなデザインになっている。センターコンソールが多少運転席に向いているドライバーオリエンテッドなバーチャルコックピットは気持ちがいいし、まるでタグホイヤ製の腕時計みたいにスポーティかつ高級感を感じさせる。7段Sトロニックのセレクターも「ポルシェ911」のような小型レバーに代わっているところは品よく感じた。
ダッシュボード中央には、10.1インチの大型タッチスクリーンを搭載し、実際に指での操作のスピード感は、旧型と比較してずいぶんと速くなって確実になった。また、携帯が充電できるスペースもタッチスクリーンのすぐ下にあるので、使いやすい。
ところが、エアコンなどのスイッチが今までとは全然違うタッチタイプになっているので、使い慣れるまで少し時間がかかる。最初は使い方がイマイチわからなかった僕は、何回かクルマを止めて、適切な気温と風の調整をセットせざるを得なかった。また、エアコンの吹き出し口は、ランボルギーニ・ウルスのデザインからヒントを受けていて、かなり大きめで高めの位置になっている。
しかし、もうひとつ嬉しいことに、ハンドルやシートを調整すれば簡単に適切なドライビングポジションは調整できたし、意外にリアのウィンドーからでも視認性がよかった。また、パーキングセンサーも付いているので、駐車する時は楽だ。
さて、エンジンだ。エントリーレベル車は、最高出力110PSと最大トルク200Nmを生み出す1リッター3気筒直噴ターボに7段Sトロニックを組み合わせたパワートレインを積む。その数字だけを気にすると、少し心配になるだろうが、実際にアクセルを踏んで発信すると、出だしは意外に鋭く滑らかだ。一般道などでの加速感は十分あって、極めて軽快にスムーズに走る。
爆発的な加速ではないにしても、やはりあのターボの過給と、48Vのマイルドハイブリッドシステムのコンビネーションから生じる力強いレスポンスは納得できる。7段ATとの相性も良くて、嬉しいことにシフトショックがないし、そのパワートレーンのおかげで燃費は18km/L前後(WLTCモード)で収まる。
ハンドリングと乗り心地は期待していた通りだった。リアサスペンションが旧型のマルチリンクからトーションビーム式に変更され、コストダウンを図っているようだけど、実際には、コーナーでは、ステアリングが軽めながら手応えはしっかりしていて、狙った通りのラインを進んでくれる。
またロールが抑えられて静粛性は一段と向上した感じ。Sライン仕様だと車高がより低いので、荒れた路面では多少ポコポコした印象を受けたけど、気になる程ではない。ちなみに僕が乗ったファーストエディションは18インチタイヤを装着していたけど、ベーシック仕様は16インチ。
ライバルのメルセデスAクラス、BMW1シリーズなどと比べて、ルックスは格好いいし、走りや乗り心地は洗練されているけど、若干室内の質感はライバルには劣るかなという感じだった。でも、総合的には、453万円から価格がスタートするA3は、このセグメントの有力モデルになることは間違いなし。
国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
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