世界中の突出したサイエンスやテクノロジーを早期に見いだし、強靭なチームビルディングを推し進めて、世界・人類の課題解決に資する企業へと育て上げる。東京大学発のVC、UTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)が資本・人材・英知の総力を挙げて取り組むスタートアップ支援のフロンティアに迫る連載。第四回では、UTECが強化するHR支援について取り上げる。
UTECの支援を受けて2013年に上場し、現在では時価総額が6,000億円を超えているペプチドリームの創業は06年。「特殊ペプチド」で独自技術を有する東京大学大学院の菅裕明教授と実業家の窪田規一が共同で創業している。UTECは、同社の起業前の05年から菅教授との協働を始めた。共同創業者として窪田をヘッドハンティングしたのもUTECだ。
「優れたサイエンス/テクノロジーを有する研究者やエンジニアがいても、起業後の成長を力強く推進するチームが組成されなければ、グローバル企業への道筋は描けません。そこで重要な要素として挙げられるのが、トップクラスの経営チームの早期構築です」
UTECは、投資先の創業前を含むあらゆるフェイズに応じた組織開発支援を行う“HR, Executive Talentチーム”を立ち上げている。経営人事の重要性を語る沖大典は、同チームのシニアマネージャーだ。これまでに、UTECは共同創業者を含むCEOやCOO、海外企業の日本支社長といったポジションに就く経営人材を100名以上も輩出し、25件のIPOやM&Aなどを成功させた。そこには米国NASDAQでのIPO、Googleなどの海外トップ企業へのM&Aも含まれる。なぜ、そのようなことが可能なのか。
「私たちは、独自のタレントプールとして『UTEC Startup Opportunity Club(SOC)』を抱えています。このクラブは招待制で、数百名のプロ経営者が属しています。上場企業のCxOや、プロフェッショナルファームの役員層・連続起業家などが在籍しており、非常に質の高いエグゼクティブコミュニティです。近年では創業時からスタートアップの立ち上げから関与して社会課題解決に貢献したいと考えるエグゼクティブが増えて、人材の流動性が高まっています。そして、そうしたトップクラスの経営人材に対するマネジメントキャリアの提案ができるSOCが選ばれているのです。また投資先に対しては経営者の紹介だけはでなく、紹介した後の組織の活性化や、あるべき組織図・必要な機能の設計の支援も行なっています。」
HR支援の特徴基本的な人事機能のサポートだけでなく、企業価値向上のためUTEC独自の組織開発支援も提供。UTECが創業した04年の段階で、HR支援まで行えるVCの存在は極めて希だった。当時から積み重ねてきた「世界レベルのトップサイエンティストとトップ経営者をつなぎ、グローバル企業を生み出すノウハウ」は、現在においても他のVCを凌駕する。いま、UTECのHR専任チームに在籍しているのは沖を含めて4名。グローバル経営・Exit経験者、データエンジニアリング・PR/マーケティング経験者など豊富な経験をもつプロフェッショナルたちだ。
おき・ひろふみ◎UTECシニアマネージャー、HR/Executive Talent。在学時からベンチャーに特化した組織コンサルティング企業に就業。IT・ヘルスケア業界の経営人材のヘッドハンティング・チームアップ支援を経て、2018年にUTEC参画。
サイエンス/テクノロジーの領域で日本最大規模のファンドが始動UTECのスタートアップ支援が成果を上げ続ける理由とは#1 公開中|世界・人類の課題解決のためのフロンティアを開拓するUTECの投資哲学とは
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#3 公開中|シード/アーリー段階の投資強化へ。UTECの投資哲学の原点に立ち返る新たなプログラム「UFP」とは
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