突出したサイエンスやテクノロジーを早期に見いだし、強靭なチームビルディングを推し進めて、世界・人類の課題解決に資する企業へと育て上げる。東京大学発のVC、UTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)が資本・人材・英知の総力を挙げて取り組むスタートアップ支援のフロンティアに迫る連載。第二回では、2021年5月より始動している新たなファンド「5号ファンド」についてUTEC代表が語る。
2004年以来、UTECは110社以上のスタートアップに投資してきた。13社が株式上場、12社がM&AなどのEXITを果たしている(20年12月時点)。04年の1号ファンドで約83億円、その後18年の4号ファンドに至るまでに総額で約543.3億円ものファンドを設立してきた。そして、本年5月に新たに5号ファンドを組成。ファンドサイズはかつてない規模の304億円となり、サイエンス/テクノロジー領域のファンドとしては国内最大規模だ。UTECの共同創業者であり、日本のVCファンドの仕組みづくりから手がけてきた郷治友孝が、この規模感の意義を語ってくれた。
「これまでにUTECが投資してきた案件で最大の成功事例は、東京大学発の創薬ベンチャーとして起業し、時価総額が6,201億円(7月16日時点)となったペプチドリームです。01年以降に設立された企業で、この時価総額を超えているのはメルカリ、ZOZO、ネクソンの3社のみ。私たちは、このようにスケールの大きな事業をつくることを投資先企業と一緒に目指していきたいのです。そうなると当然、資金需要は大きくなります。企業の経営の基盤となるHRを強化し、UTECが力を入れるグローバルな展開も視野に入れ、さらにはシード以降の支援のためにも、ファンドサイズは大きなものが求められるのです」
多様なEXITの実現(2020年12月31日時点)UTEC投資先企業は、株式上場に加えて、国内外の大企業へのM&Aや株式譲渡等を含むEXIT(卒業)を果たしてきた。5号ファンドにおいては、すでに5件の投資先が決まっている(7月中旬時点)。その背後では、1,000件ほどのソーシング(案件発掘)を行ってきた。その内8割は、まだ会社になっていない最早期の案件が占める。投資を実行するにあたってのスケール感に加えて、ソーシングの広さと深さで他のVCを圧倒しているのだ。
ごうじ・ともたか◎UTEC代表取締役社長/マネージングパートナー。
1996年、通商産業省(現経済産業省)に入省し、『投資事業有限責任組合法』(1998年制定)を起草。2004年、UTECを共同創業。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、東京大学博士(工学)。
サイエンス/テクノロジーの領域で日本最大規模のファンドが始動UTECのスタートアップ支援が成果を上げ続ける理由とは#1 公開中|世界・人類の課題解決のためのフロンティアを開拓するUTECの投資哲学とは
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