U30世代の若者が社会に対して感じるモヤモヤを、第一線で活躍する大人にぶつけて、より良いヒントを探る連載「U30と考えるソーシャルグッド」。今回は、元バレーボール日本代表の大山加奈さんに、NO YOUTH NO JAPANのメンバーが、アスリートのメンタルヘルスについて聞く。
(前回の記事:「言い切らない」強さをもつこと 地域編集から見えた「ふつう」のあり方)
「弱さを見せず、感動を与えてくれる強い人」アスリートに対してそんなイメージを持つ人は多いのではないだろうか。しかし、アスリートにも精神的な負担はのしかかる。アスリートが健全にスポーツに専念できる社会とはどんな社会だろうか。
メディアと切っても切れない関係、しかし
NO YOUTH NO JAPAN三村紗葵(以下、NYNJ三村):アスリートのメンタルヘルスの問題に注目が集まっています。実際に大山さんは現役時代、どんなストレスを感じていましたか?
大山加奈(以下、大山):オリンピックなど注目度が高い大会では、環境が急に変わることがストレスになると思います。私の場合は、強くなりたいと目標に向かってひたすら競技に向き合っていた環境から、オリンピックで急に競技の注目度が上がり、競技以外を含めて一挙手一投足が注目されるようになり自由が全くなくなりました。部屋から一歩外に出れば誰かの目があるので寝ている時以外は常に気が抜けず、外に出るのが怖くなる時期もありましたね。
また、日本代表として選ばれるのが12名というとても狭き門のなかで、仲間を蹴落としてでも自分が生き残らなければいけないことが、私は一番きつかったです。
NO YOUTH NO JAPAN足立あゆみ(以下、NYNJ足立):大坂なおみ選手が全仏オープンで試合後の記者会見に出席しないと発表したことを発端に、アスリートのメンタルヘルスに注目が集まるようになりました。報道陣からの質問などもアスリートにとって負担の一つなのでしょうか?
大山:報道によって応援してくださる方が増えたり、競技の普及もメディアにどれだけ取り上げられるかに直結しているので、メディアはスポーツやアスリートと切っても切れない、必要な存在だと思います。それでもアスリートも人間なので、特に試合に負けて自分の不甲斐なさを感じている時にインタビューに答えなければいけないのは、正直つらいと思うこともあります。
私は現役時代、同じ身長で同じポジションの栗原恵選手と「メグカナ」とセットで呼ばれて注目を浴びていた時期がありました。そのおかげでみなさんに覚えてもらいましたが、栗原選手が活躍した時に、彼女と比較されることがすごく多かったんです。
インタビューで、わざと泣かせにかかる質問をされることもありました。「栗原さんは何点とって活躍しましたが、大山さんはこれしか取れませんでしたね。栗原さんの活躍を見ていてどう思いましたか」というように。思い通りにさせないと耐えるんですけど、やはり泣いちゃうんですよね。