大山(続き):アスリートは強くないといけないと思っていましたし、特に私はエースと呼ばれるポジションを任されていたので、エースとして相応しい、強い人間でなければならないと思い込んでいました。だから、そのようにアスリートを泣かせにかかるようなメディアの質問に対しても虚勢を張って、強い自分を見せなければと思い、ストレスに感じていました。
2018年全米オープン決勝での大坂なおみとセリーナ・ウィリアムズ(GettyImages)
NO YOUTH NO JAPAN和倉莉央(以下、NYNJ和倉):「アスリート=強い」といった、アスリートに対するさまざまなステレオタイプが社会には存在しているのではないかと思います。「『美人』アスリート」のように見た目を強調する表現をされているアスリートもいます。そうした社会からのアスリートに向けられる目やイメージ付けについて、どうお考えですか?
大山:これはすごく難しくて、私自身も悩むところです。
「メグカナ」の栗原選手には「プリンセスメグ」、私には「パワフルカナ」というキャッチフレーズがついていたんです。当時は、1人はプリンセスなのになんで私はパワフル?と思っていたのですが、栗原選手に「カナはプレーの特徴のことだからいいよね」と言われてハッとしました。確かに、プリンセスと呼ばれるのは本当にしんどかったと思います。もしSNSが普及する現代にそんな呼ばれ方をして注目を集めていたら、活躍できなかった時に攻撃の対象になってしまうのではないか、と思うくらいの過剰な取り上げられ方でした。
一方で、応援してもらいたい、たくさんの人にバレーボールを好きになってほしいという想いはすごく強くて。「美人、イケメン」というわかりやすいワードが報道に入っていると、目を引きますよね。メディアのそうした文言から競技に興味を持つ人がいるのも事実なので、いまの日本だと覚えてもらうためには必要なことではあるのかなとも思います。
「痛い、つらい=弱い」? 困っていても、声には出せない
NYNJ三村:東京五輪の体操女子団体の予選では、ドイツの選手たちがボディスーツを着用して出場した事が話題となりました。性搾取の問題は、アスリートが健全に競技に臨める社会を考える上でも重要な点だと思います。アスリートの性搾取の問題に対して、選手たち自身が問題意識を持ったり、困っていることを声に出したりしにくい環境があるのでしょうか?
大山:まず、私の場合は疑問を持つことがなかったんです。私は中学1年生まではユニフォームがブルマで、それが当たり前だったから疑問を持ちませんでした。でもやがて、おかしいのではないかという声が徐々に出始めて、バレーボールのユニフォームも短パンになり、少しずつ変わっていきました。