米国では大きな成功を収めるのは白人に偏っているが、この1年で中国からは210人ものビリオネアが誕生した。またインド出身の新たなビリオネアは19人、日本は14人、その他のアジア各国から7人というように、新たに番付入りしたビリオネアの大多数はアジアなどの出身だった。
米フォーブス誌はコーポレート・シチズンシップを調査するジャスト・キャピタルと共同で、数十億ドル規模のビジネスを展開する企業をピックアップし、従業員、顧客、環境などの要素について業界平均を基準にスコアを算出。新たにリスト入りした88人の米国人ビリオネアの、社会への貢献度を測定したところ、新入りのビリオネアが創業・経営する企業は従業員、顧客、環境の3つの要素に関して業界平均を上回るだけでなく、10年前の新人ビリオネアと比較してより進化が見られた。
新世代のビリオネアたち
クリス・ブリット 年齢 48歳 総資産 13億ドル 順位 2263位 Chime(モバイル銀行)CEO
例えば、8年前に創業したチャイムを世界最大級のデジタル銀行に育て上げたクリス・ブリットが良い例だ。手数料収入を主とする業界において、チャイムのような銀行は目の敵にされやすい。しかしブリットは低リスクと顧客第一主義を掲げ、コロナ禍において市場シェアを伸ばした。「最前線にいる私たちは、米国人がどれほど疲弊しているかがわかる」と彼は言う。
チャイムは顧客データを活用して、コロナ給付金の小切手を担保に無利子で貸し付けを行い、スポットミーと名付けた当座貸し越しのサービスも提供を開始(一般的なペイデイローン会社は、給付金小切手を担保とした貸し付けに650%もの高金利を設定する)。顧客第一主義は、質の高い従業員の雇用につながり結果としてより大きな利益をもたらす、とブリットは言う。従業員数は1年間で3倍の800人に増加。株主の評判もいい。2020年9月時点の、ベンチャーキャピタル投資家によるチャイムの評価額は145億ドル(約1兆5700億円)に上る。
また過去1年間の純資産が500億ドル(約5兆4000億円)を超えたロケット・モーゲージの創業者ダン・ギルバートも、地元を支援する一人だ。彼はデトロイトの低所得者層を支援するため、自社と私的財団で合計5億ドル(約540億円)を出資して住宅所有者2万人分の資産税の借り入れを帳消しにした。デトロイトは彼が本拠地を置いた都市であり、「私たちにはデトロイトに恩返しする義務がある」とギルバートは語る。