「言い切らない」強さをもつこと 地域編集から見えた「ふつう」のあり方|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、Re:S代表の編集者、藤本智士

SNSの発展により、誰もが発信できるようになった時代。都会を中心とした情報発信の時代は変わりつつある。

U30世代の若者が社会に対して感じるモヤモヤを第一線で活躍する大人にぶつけて、より良いヒントを探る連載「U30と考えるソーシャルグッド」。今回のテーマは「ローカルメディア」。地域を編集するとはどういうことか。日本の地方をテーマに本づくりや雑誌編集、プロデュースを手がける会社Re:S(りす)の代表で、編集者の藤本智士さんに、NO YOUTH NO JAPANのメンバーが話を聞いた。

(前回の記事:「代替肉で世界を救う」 アメリカ法人CEOが語る食の未来)

都会への人口集中が続く日本。だが、コロナ禍で地方移住に興味を持つ若者も増えてきている。ソーシャルグッドな未来に向けて、U30は地域の魅力とどのように関わっていくと良いのだろうか──。

地域のやり方を日本中に提案したい「地域編集」


NO YOUTH NO JAPAN足立あゆみ(以下、NYNJ足立):藤本さんが行う広義な「編集者」のお仕事や「地域編集」とはどんなものなのでしょうか。

藤本智士(以下、藤本):広義な編集者の仕事とは、チームを作って、既にあるものを生かしたり、この人とこの人を合わせたら新しいものが生まれるんじゃないか、とディレクションしていくようなお仕事です。一般的に「編集」と言うと、テキストメディアのイメージが強いと思います。でも、本を作るだけじゃなくて、商品、展覧会、場所のように、さまざまなメディアを活用しています。編集するメディアが変わると、内容や形も変わってくる。このように「編集」は自由に変化する、広義なものです。

未来の地域のためにいまできることを考えて、行動すること。これが「地域編集」だと思っています。僕は地方に行くことが多くて、いろいろな地域を見るうちに地域に泥臭く入り込んで、携わりたいと思うようになりました。地域にはさまざまな人、農作物、工業があり、可能性がある。そうした地域の多様な魅力を一冊の本を作るように編んでいく。つまり「地域編集」とは、自らもプレイヤーの一人でありつつも、監督のように地域を演出して、街のビジョンを共有していく仕事ですね。

NYNJ足立:都会の編集ではなく地域に焦点を当てている理由は何ですか。

藤本:例えば、東京制作の番組を見ていると、視聴者が北海道に住んでいようが関西に住んでいようが当たり前のように代官山のお店を紹介しいてますよね。私は、なぜ東京のメディアだけが、あんなにも堂々とローカル情報を発信するんだろうと疑問に思っていました。ならば他の地方からも堂々と情報発信することがもっと「ふつう」になっていいなと思って活動してきました。SNSなどで情報発信が簡単に出来るようになったいまもなお、その傾向は思うほど変化していないと感じることもあるので、ぜひ沢山の人にそれぞれの地域から発信してほしいですね。そういう想いを込めて地域の編集をしています。

秋田から「あたらしいふつう」を


NYNJ足立:藤本さんが創刊された秋田県のフリーマガジン『のんびり』では「ニッポンのあたらしいふつうを秋田から提案してみようと思います」と発信されていますが、「あたらしいふつう」とは何ですか。また、提案しようと思ったきっかけを教えてください。
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文=和倉莉央(NO YOUTH NO JAPAN)

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