「言い切らない」強さをもつこと 地域編集から見えた「ふつう」のあり方|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、Re:S代表の編集者、藤本智士


これからは白黒を求めず、「グレー」を受け入れよう


NYNJ和倉:藤本さんは、メディアを通じて状況を変えることを「編集力」と定義していますが、藤本さんご自身はこの編集力をどのように使って日本をソーシャルグッドな社会に導こうと考えていますか。

藤本:「編集力」は編集者だけではなく、みんなが持っている力です。それぞれが思う、理想の暮らしを実現するためにどういうステップを踏むべきか、考えを持って行動していくことは、誰でもできるということをこれからも伝えていきたいです。

僕にとってソーシャルグッドな社会とは、曖昧さを受け入れ、変化していくことに対して寛容な世の中です。「昨日と言ってることが違う」などと責めずに、変わるのを当たり前とする。実際、僕は編集するとき「〜はこうだ」と言い切ることを極力しません。それを逃げと捉えられるときもあるんですが、これは僕なりの誠実なんです。想像力や配慮が芽生えるほどに、世の中の多くのことは言い切れなくなるんじゃないかと思います。一貫した姿ってかっこよく見えたりするんですが、そういう人ほど時代とともに常に変化しています。曖昧さや変化に寛容な社会であってほしいなと思います。

NYNJ和倉:「あたらしいふつう」を作るために私たちU30世代ができることは何でしょうか。ヒントを教えてください。

藤本:「あたらしいふつう」とは、白黒はっきりしていないものをそのままに受け入れること。だから、U30には白か黒のどちらが正しいかを決めたり、どちらに属するかを定めたりしてしまうのではなく、白も黒も両方を認めながら生きてほしいと思います。ソーシャルグッドな世の中には、変化していくものへの寛容が大切だと思います。若者が熱狂したり、なびいてしまう言葉のなかには、言い切っている言葉が多い気がしています。言い切られると答えを教えてくれたような気持ちになるし、気持ちいい。その気持ちよさを疑ってほしいと思います。そうやって考え続ける力や、答えを出さないままでいられる強さを持って欲しいなと思います。

取材を終えて


先が見えない状況のなかで揺らぐ「普通」。今回の取材では、このような疑問や不安について向き合い、お話を聞きました。「地方・ローカル」がテーマの取材だったため、「地域活性」がソーシャルグッドな社会として語られるのかと思っていましたが、曖昧さや変化していくことに寛容な社会を「あたらしいふつう」にしたいという藤本さんの活動への想いが明かされたことが予想外でした。U30が日本をより変化に対して寛容な、ソーシャルグッドな社会に導くことを期待しています。私自身も編集力を使って物事を多面的に捉え、考えを発信していこうと思いました。


藤本智士◎1974年生。兵庫県在住。編集者。有限会社りす代表。雑誌『Re:S』(2006〜2009)『のんびり』(2012〜2016)WEBマガジン『なんも大学』(2016〜)編集長。自著に『魔法をかける編集』(インプレス)『風と土の秋田』(リトルモア)、共著に『Babybook』(イラストレーター福田利之)、『アルバムのチカラ』(写真家浅田政志)など。その他『ニッポンの嵐』『るろうにほん熊本へ』など手がけた書籍多数。


連載:「U30と考えるソーシャルグッド」
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文=和倉莉央(NO YOUTH NO JAPAN)

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