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2021.07.02

ジェフ・ベゾスは「宇宙から戻らないで」 署名運動に十数万人

(c) Blue Origin

世界でも指折りの大富豪であるジェフ・ベゾスは今月下旬、自身の宇宙企業ブルー・オリジンが打ち上げる宇宙船に乗って、地球を一時離れる予定だ。ただ地球では、ベゾスがそのまま宇宙にとどまることを希望する人も多いようだ。

署名サイト「チェンジ・ドット・オーグ」で立ち上げられたベゾスの地球帰還禁止を求める署名運動には、既に約14万人が参加。署名ページの説明には、「億万長者は存在すべきではない。それは地球上でも宇宙でも同じだが、後者を選ぶのであれば、そこにとどまるべきだ」とある。

また「ジェフ・ベゾスの地球への再突入を許可しないための請願」と題された2つ目の署名運動には、2万2000人以上の人が賛同している。

これらの署名ページは冗談で立ち上げられたが、その背景にある感情は本物のようだ。貧富の差拡大に対する世論の怒りは増大しており、富の保持に執着する大富豪への風当たりは強まっている。

ベゾスは投資家の間では人気かもしれないが、アマゾンの物流施設から漏れ出す不穏な話や、まるでモノポリーのゲームのように地球上のありとあらゆる産業を支配しようとしているかのような同社の戦略が、世間から好意的に見られていないのは間違いない。

ベゾスはまた、少なくとも他の大富豪と比べて財布の紐が固いと批判されてきた。億万長者は節税対策ともなる慈善活動への寄付を好むものだが、一方のベゾスは面子を保てていない。政治アナリストのアール・オファリ・ハッチンソンは、ドナルド・トランプ前大統領でさえ資産の3%以上を寄付しているのに、ベゾスの寄付額は1%未満だと指摘している。

同じ大富豪であるイーロン・マスクも物議を醸す人物ではあるが、マスクは熱烈なファンを集めてきた。マスクは自身の世間一般に対するイメージの作り方を心得ている。たとえそれが、つまらないネット上のミームをツイッターに投稿したり、おやじギャグを発したりすることだったとしてもだ。

一方のベゾスには、親しみが持てる人物というイメージはない。マスクは米コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」でばかばかしい役を演じることも喜んで応じるが、対するベゾスは頻繁に、SFに登場する悪の帝王、つまり地球には似つかわしくない存在としてやゆされる。コメディーアニメ「サウスパーク」で、ベゾスが世界征服をもくろむ宇宙人として描かれたエピソードは有名だ。
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編集=遠藤宗生

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