ゲイツは、自身のブログ「ゲイツノート」のなかで、人類と自然の関係について書かれた本に手が伸びるようになったと述べている。その理由は「おそらく、ウイルスの出現で、全人類の暮らしがひっくり返ってしまったから」、さらには「今年はかなりの時間を費やして、気候が引き起こす大災害を回避するために必要なことを議論してきたから」かもしれないと書いている。では、ゲイツが薦めるこの夏の必読書を5冊紹介しよう。
『Lights Out: Pride, Delusion, and the Fall of General Electric(ライツアウト:傲慢と迷妄、そしてゼネラル・エレクトリックの凋落)』 トーマス・グリタ、テッド・マン共著(未邦訳)
トーマス・グリタとテッド・マンが、ゼネラル・エレクトリック(GE)という大成功を収めた巨大企業が、その後どのように没落したのかを描写した1冊。ゲイツはブログで、GEについてここ何年かあれこれ考えてきたが、本書が多くの疑問に対する答えを出してくれたと述べている。本書では、GE上層部が下した決断が失敗し、会社が誤った方向へと導かれていった過程がありありと描かれている。人の上に立つ人は特に読むべき1冊だとゲイツは薦めた。
『Under a White Sky: The Nature of the Future(白い空の下で:未来の自然)』 エリザベス・コルバート著(未邦訳)
2015年に『6度目の大絶滅(邦訳:NHK出版)』でピューリッツァー賞を受賞した環境ジャーナリストのエリザベス・コルバート。その最新作が、人類のインパクトが生み出した世界の未来と、それによって自然界がどう再編成されたかを検証している本書だ。
コルバート本人はこの本を、「問題解決を試みる人が生み出した、問題を解決しようとする人たちの本」だと説明している。本書で取り上げられている「遺伝子ドライブ」や「気候工学(ジオエンジニアリング)」などのイノベーションや介入が、人類が自ら招いた環境問題を解決に導いてくれるかもしれない。
『約束の地 大統領回顧録I』 バラク・オバマ著(邦訳:集英社)
第44代米国大統領バラク・オバマの回顧録第一弾は、生い立ちやキャリアの幕開けから、2011年のオサマ・ビン・ラディン殺害に至るまでを振り返った内容だ。大統領在任中の日々を驚くほど誠実に省察しており、米国大統領という孤立した体験を詳細に語った稀に見る1冊と言える。ゲイツは本書について、「困難な時期に一国の舵を握るのはどのようなことなのかを垣間見ることができて興味深い」と述べている。
『オーバーストーリー』 リチャード・パワーズ著(邦訳:新潮社)
2019年度ピューリッツァー賞フィクション部門を受賞した本書は、登場人物9人の姿、ならびに彼らの木との関係を追った作品だ。登場人物たちは、互いに交わる場合もあれば、まったく交わらない場合もあるが、彼らと木との結びつきと、原始林を保全しようとする彼らの情熱には伝染性がある。
『An Elegant Defense: The Extraordinary New Science of the Immune System: A Tale in Four Lives(エレガントな防衛:免疫システムの驚くべき新科学)』 マット・リヒテル著(未邦訳)
ニューヨーク・タイムズ紙の科学記者で、ピューリッツァー賞受賞歴のあるマット・リヒテルが、中世の黒死病(ペスト)から、ワクチンと抗生物質が進歩する20世紀までの伝染病史を案内する1冊だ。著者による世界的に著名な科学者たちのインタビューが、人体の複雑さや、「病気を生き抜く力」の複雑さを解き明かしている。