このように新しいアイデアを求めて「未来をのぞく」というのは、新たな機会を発見するための良い方法の1つです。
ただし、制限もあります。例えば、それぞれのケースで注意点となるファクターを把握し、考慮しなければ、誤った解釈につながってしまう可能性があります。日本と海外とでは、文化や規制など、様々な点で条件が根本的に異なっていることもあり、同じようなビジネスを展開しようとしても、それらの違いが障壁になってしまうかもしれないのです。
とはいえ、「〜は日本では無理だ」という印象は、結果的に否定されるようなケースがほとんどだと感じています。日本は「ガラパゴス」だからiPhoneは流行らないと、当時は評論家などから言われていました。Facebookのときも、日本人はSNSで個人名を出すことを嫌うから、日本での展開は厳しいと思われていました。同様に、日本人には現金派が多いから、キャッシュレス決済の普及は無理だと言われていました。でも、どの予想も外れたのです。国籍などが違っていても、人間というのは実際のところ、私たちが自覚している以上にお互いに似ているようです。ソリューションは多少違うかもしれませんが、元となるペインポイント自体は共通していることが多いのです。
そのため、新しいコンセプトを検討するとき、私は「このコンセプトは日本でも通用するか」だけではなく、「日本生まれのプレイヤーだからこそ、シェアの大半を獲得できると考えられる強い根拠が存在するか」という点についても考えます。
具体的には、規制や文化、構造的な違いによって、海外プレイヤーが市場に参入しにくい状況かどうかを確認します。例えば、ヘルスケアや金融サービスなどは海外からの参入に対する法規制が厳しく、豊富な資金力を武器に強引な手段も使える大手海外プレイヤーでさえも、容易には日本へ進出できない状況となっています。市場固有の、高い参入障壁が最初から存在するのです。