ミシェル・オバマはそれと対照的に、多くの面でバラクを超える存在となった。歴代大統領夫人の中でも特に人気が高く、メリンダやマッケンジーと比べてより平等な夫婦関係を築いた(これには多大な努力と交渉があったことは、ミシェルの著作で説明されている)。
女性は気まぐれで離婚したりはしない。熟年離婚の裏には、何年にもわたりくすぶっていた原因があることが多い。ただ、傷の蓄積を象徴する一つの出来事がある場合も多い。例えばメリンダは、自分が共同代表を務めるビル&メリンダ・ゲイツ財団の報告書に共同執筆者として自分の名前を載せるだけのために、何年も闘わなければならなかった。自分の名前掲載を拒否されるのは非常に屈辱的で、自分が無力な存在だと感じさせられるものだったはずだ。
メリンダは世間の人にとっては世界で最も影響力のある女性の一人に見えるかもしれないが、夫婦になったとたん、書面に自分の名前を載せることもできなかった。彼女は著書『いま、翔び立つとき』で、「ビルは、平等になる方法を学ばなければいけなかった。私は、前に進み出て、平等になる方法を学ばなければいけなかった」と述べている。
人が年を重ねてから持つようになる価値観は、若いころの価値観や、パートナーの今の価値観と大きく異なる場合がある。これは、ゲイツ夫妻が近年、財団などでそれぞれ異なる分野に注力してきたことに明らかに表れている。夫妻は別々の投資団体を設立し、メリンダは女性や女子に対する支援に、ビルは気候変動問題に注力するようになった。メリンダが離婚弁護士に連絡を取り始めたのは、ビルが性犯罪者のジェフリー・エプスタインと親交があったとの疑惑を耳にしたときだった。
マッケンジーは離婚後すぐ、資産の半分以上の寄付を誓う慈善活動「ギビング・プレッジ」に署名し、新型コロナウイルスの流行中には早いペースで資金の分配を進めた。これに促されたのか、ベゾスはその後、気候変動問題に100億ドル(約1兆1000億円)を寄付することを宣言した。元妻が自分より多く寄付していることは体裁が良くないのだ。
ジェフ・ベゾスとマッケンジー・スコット(Getty Images)