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2021.06.20 17:00

産後の精神科受診、コロナ禍で30%増加との新調査

Getty Images

産後の心の問題を治療するための医療機関の受診は、新型コロナウイルス感染症が流行している間に30%増えていたことが調査により判明した。

この調査は、カナダ・オンタリオ州で出産後の女性13万7000人以上を対象に実施されたもので、カナダ医師会雑誌(Canadian Medical Association Journal、CMAJ)に先日発表された。今回の発見前にも、コロナ禍による心の健康への影響は他にも多く明らかになっている。

同調査によると、新たに子どもを持った母親の不安・抑うつ障害による医療機関の受診は、新型コロナウイルス流行前と比べて2020年3月~11月の間に39%も増えた。また、アルコールや薬物など物質使用障害による受診も増えていた。

オンタリオ州の人口密度が低めの地域では、増加率が夏の初めにコロナ禍以前の産後の精神科受診水準まで戻った。これは、新型コロナウイルスの感染者数が減ったことで、対面授業や人との食事など、通常通りのことができるようになったからかもしれない。

トロント大学附属ウィメンズカレッジ病院の精神科長で研究の主執筆者のシモーン・ビゴッド博士は、低収入の女性の間で精神科の受診がそれほど増加しなかった理由は、仕事を休めないことや遠隔医療の受診ができる無線LANや携帯電話を持っていないことが原因の可能性があると述べた。

ビゴッドは「産後の精神疾患は問題なく治療できる」と述べつつ、医療にアクセスできなければ女性の健康に影響を与える長期的な問題になりかねないと警鐘を鳴らした。ビゴッドは、産後の不安や鬱(うつ)は子どもの社会的・感情的な問題にも関連しているとし、「世代にまたがり長期的な影響が生じる可能性がある」と述べた。

ビゴッドによると、新型コロナウイルスの流行により、家族や親グループ、保健師など、新たに子どもを持った親らが頼りにする社会的支援の多くが断たれた。米国でも、心の健康問題は新型コロナウイルス感染症が流行する中で広く増加してきた。

米疾病対策センター(CDC)に対し2019年、不安や抑うつ障害の症状を報告した成人は10人中1人をわずかに超える水準だった。しかし2020年になると、CDCの調査に対して不安症やうつ病の症状があると答えた成人は頻繁に4分の1以上に達し、こうした問題に苦しんでいると答えた人は3分の1以上になるときもあった。

翻訳・編集=出田静

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