これは経頭蓋交流電気刺激(tACS)と呼ばれるメソッドで、米空軍も実験を行っている。もし本当に効果があるのであれば、人間のメモリをアップグレードするようなものであり、知能向上のためのサブスクリプションサービスと言えるかもしれない。
「我々は、過去10年間の研究成果を商業化した。少量の電気を流すことで脳の細胞をつなげ、脳内の活動をチューニングしている。当社のデバイスは、脳の学習スピードを向上させ、データの分析や情報処理をより速く、うまく行えるようにする」とHummの創業者兼CEOであるIain McIntyreは先日のポッドキャスト番組「TechFirst」で語った。
まるでSFのような話だが、McIntyreによると同様の手法は過去30年間に渡って医療で用いられており、例えば神経刺激を用いたうつ病治療の実験には数万人が参加しているという。しかし、こうした研究に使用されたデバイスの価格は1台当たり約1万ドルと高価で、セットアップには30分もの時間がかかったという。
Hummは、既存のサイエンスを用いた治療法を比較的安い価格で人々に提供することを目指している。McIntyreは脳をオーケストラに例え、Hummのデバイスが最高のパフォーマンスを引き出す指揮者の役割を果たすと述べた。これを実現するのが、額に装着したパッチからの微弱な電気刺激だ。
「小さなパッチが発する微弱な電気が額に流れ、脳内のニューロンが特定の周波数で相互作用するよう促す」とMcIntyreは話す。彼は、祖母が学習能力を失ったことがきっかけで神経科学に興味を抱くようになったという。
しかし、Hummのデバイスに本当に効果があるのかという疑問は残る。世の中には何千ものスタートアップが夢物語のような製品を開発しており、本当に機能するものと失敗作との区別がつきにくい。Hummのように記憶力と学習能力が20%も向上することをアピールする製品であれば、外部の専門家による検証を受けることが重要になる。