新型コロナウイルスの起源について再調査する米国のチームには、改めて念頭に置いておくべきことがある。それは、2001年に起きた炭疽(たんそ)菌入りの郵便物が政府関係者などに送り付けられた事件で、連邦政府が科学捜査を行うために適切なスキルを持つ人材を集め、合理的な調査を行う準備を整えるには、何年もの時間がかかったということだ。
それでも、このときの調査で「決定的な証拠」を見つけることはできなかった。新型コロナウイルスについて、中国の現場から得られた重要な証拠がなく、それで90日間で確定的な結論を出そうとすることは、よく言っても「非常に困難な仕事」だろう。
このような調査においては、その客観性を維持し、あらかじめ決められた結論に向かって調査が行われることがないようにするため、情報機関の関係者に加え、多くの分野の専門家を集める必要がある。最低でも必要とされるのは、疫学、ウイルス学、ウイルスゲノム、実験室の安全管理、労働衛生、生物兵器の専門家たちだ。
「ない」ことの証明は困難
調査において最も困難なことの一つは、「起きていないこと」を証明することだ。つまり、このウイルスが武漢研究所から流出したものではないと証明することは、容易ではない。
たとえ中国が再び外国の調査チームの入国を許可したとしても(そうするかは疑わしいが)、すでに経過した時間は、調査をより困難にしているだけだ。米国の調査によって得られる結論は、決定的なものにはならない可能性がある。
調査チームは、さらなる疑惑を見つけるだけかもしれない。答えが出ていない、あるいは出せない疑問が、さらに増えるだけかもしれないということだ。