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2021.06.07

国内LCC初、米本土へ。航空業界の異端児「ZIPAIR」の挑戦

提供:ZIPAIR Tokyo


「社員の割合は、女性比率が高い。女性の場合、妊娠がわかると乗務ができなくなる。その後も出産、育児というイベントが重なった時、地上の仕事もできるとキャリアを継続しやすくなる」

ライフステージの変化に対応できる勤務形態が整っているというわけだ。

この働き方は、生産性の向上にも一役買っているという。「今までは飛ぶだけだったが、(地上業務を担うことで)航空会社全体のことが見渡せるようになる。先の仕事が想像できると、手前でやってあげられることが増える」。

こうした兼任体制による生産性は、JALやANAといったフルサービスキャリア(FSC)と比べて段違いに良い。現場からも「今まで知らなかった航空会社のことが分かるようになり楽しい」と明るい声が上がっている。

CAの才能活かした機内食


CAの活躍の幅は、これに留まらない。ZIPAIRでは、社員が持つ才能を職場でも積極的に活かす。その代表例が機内食だ。

同社の機内では、ホノルル便では29種類、他の便も含めて平均すると、20種類以上という多種多様な食事を楽しめる。牛丼やカレー、蕎麦、カツサンドといった日本人好みのメニューが並ぶ。香味ガーリックシュリンプやハワイアンロールなど、ホノルル便限定メニューもある。

驚くべきは、公式サイトに掲載されている機内食の撮影や食器の選定、盛り付けまで、フードコーディネーターの資格を持つCAが担当していることだ。

ZIPAIRTokyo 機内食
提供:ZIPAIR Tokyo

「キャリアや趣味を突き詰めている人はたくさんいる。その能力を発揮してもらい、winwinの関係を作ろうと思った」と西田社長は語る。

さらに、飛行機を降りる際に客へ渡すメッセージカードは、グラフィックデザイナーやイラストレーターの資格を持つCAがデザインしている。

利用者と近い距離感でのコミュニケーションにも力を入れ、ツイッターを活用。あいうえお作文やクイズなど、CA自らが顔を出し、発信も行う。

子育て世代の目線に立つ


LCCは、低価格がウリの一つだが、ZIPAIRではどのような考え方で価格を設定しているのか。

西田社長が「推したい」と強調するのが、U6という運賃サービスだ。多くの航空会社は、 国際航空運送協会(IATA)という団体に加盟している。IATAの基準では、2歳未満は座席を使わない場合、大人料金の10%、2〜11歳は75%だ。

だが、ZIPAIRは加盟していない。

航空会社同士の相互の販売連携ができず、販路を個社で開拓しなくてはならない、といったデメリットもある一方で、独自の運賃を設定することができるという強みもある。

「子育てを始めると、安いから今のうちに行こうよと子どもを抱っこして旅行に行くが、夫婦仲が悪くなる。そして当の子どもは旅行のことを覚えてない。2歳くらいだとそんなもの」


ZIPAIR Tokyo 西田社長

西田社長は冗談混じりに話すが「そんな思いをして欲しくない」と、ZIPAIRでは6歳まで格安価格で提供し、座席も一席用意している。

6歳以下なら、ホノルルまで片道7000円(大人は1万9800円)、ソウルは3000円(大人は8000円)、バンコクは5000円(大人は1万2500円)。しかも、U6は時期を問わず365日同じ料金設定だ。子育て世代の意見も反映し、機内では離乳食を販売、オムツ替えシートも完備されている。
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文=露原直人 写真=曽川拓哉

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