『VOGUE』編集長であり、母体であるメディア企業コンデナストのグローバル・チーフ・コンテンツ・オフィサーでもあるウィンターは2021年4月20日、英紙『フィナンシャル・タイムズ』に対して、これまでロックダウンで需要が抑え込まれていたが、最近営業を再開したロンドンの高級ブランド店に長蛇の列ができたのは良い前兆だと語った。
「消費者は、とても長期間にわたってどこにも行けずにいたので、お金を使いたがっている。旅行やおしゃれを楽しむだろう」
ロンドンでは、営業を再開した百貨店各店舗が、ホリデーシーズンのような熱気あるマーケティングを行っている。派手な飾り付けのショーウィンドーや期間限定のポップアップショップ、ブランド同士のエキサイティングなコラボレーションなどはどれも、消費者を実店舗に呼び戻すための試みだ。
小売業界情報サイト「リテール・ガゼット(Retail Gazette)」によれば、ロンドンの主要百貨店は、フィットネスクラブ「ソウルサイクル」や、地元のさまざまな小規模ビジネスと手を結ぶことで、消費者をより重視した、体験型の環境を提供しようとしている。ロックダウン中に重要性の増したトレンドをフルに活かそうとする試みだ。
失った消費の機会をぜひとも取り戻そうという動きは、まず中国で見られた。 2020年4月に中国でロックダウンが解除されると、消費者は高級品の購入に走り、その様子は「リベンジ買い」と表現された。
ファッション業界誌「WWD」が2020年4月に報じたところによると、広州市にあるエルメス旗艦店では、ロックダウン規制が緩和されて営業を再開した初日の売上が270万ドルにも上った。ダイヤモンドで飾られた最高級バッグ「ヒマラヤ・バーキン」すらも売れたという。
こうした状況は、私たちが過ごした1年間を振り返ると度を超えたものに見えるかもしれないが、累積ワクチン接種回数が2億8900万回を超えた米国でも、中国と同様な盛り上がりが見られる可能性があることを、いくつかの指標が示している。
小売業界向け店舗分析プラットフォーム「ファースト・インサイト」の最新データによれば、新型コロナウイルスについて、不安が頂点に達していた1年前と比べると心配が減ったと答えた回答者は32%だった。また、今後もパンデミック以前より支出を抑えたいと答えた回答者は59%だった。
しかし、多くの世帯では1年前よりも暮らし向きがよくなっている。米国全体が規制下にあったなかでは、外食や旅行、ジムの利用などあらゆる消費が記録的に抑制されたうえに、政府が景気刺激策として給付金を支給したこともあって家計が安定した。そのため、経済が再開したときに自由に使える現金があるのだ。