ビジネス

2021.06.01

「オンリーワン」を武器に次世代型AGVを開発

シコウ代表取締役社長 北村敏春 

人手不足や生産性向上の観点に加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うEC需要の拡大などを受けて、製造業の生産現場や物流センターの倉庫などで使用される無人搬送車(AGV)への注目が高まっている。

調査会社グローバルインフォメーションでは、2020年から25年までの世界AGV市場規模が年平均成長率(CAGR)9.3%で推移すると予測。自動車やヘルスケア、食品・飲料など、各種業界で自動化の流れが加速する見込みだ。

小規模ながら独自の戦略で存在感を発揮しているAGVメーカーが、「SMALL GIANTS AWARD 2019-2020」でパイオニア賞を受賞した石川県のシコウだ。競合メーカーの多くが汎用のAGVを拡販する戦略なのに対して、シコウでは、顧客のニーズに応じたオーダーメイドの製品開発に特化。大手メーカーでも困難な開発案件を一手に引き受けて、設計・板金・電装・プログラミングといった製造工程を一貫して展開し、“オンリーワン”のものづくりに挑戦している。

同社は現在、新たな挑戦として映像解析システムを活用したAGVを開発中だ。従来は地面に埋め込んだ磁気テープをAGVがセンサーで読み取ることで、あらかじめ設定したルートを自動走行する仕組みだが、映像解析システムでは、機体に搭載したカメラから位置情報や障害物を読み取る。磁気テープが不要となり、走行の自由度が高まるわけだ。

代表取締役社長の北村敏春は、「特に食品業界など、地面に水が流れたりする現場では磁気テープが設置しにくいという事情があった。一方、こうした業界からのAGVへの要請は高まっており、商機は大きい」と意気込む。

大手メーカーでは、すでに映像解析システム搭載のAGVが販売されているが、いずれも汎用機であり、顧客の細かな要望に応えることが難しい。オーダーメイドを強みとするシコウの勝算は十分にありそうだ。


きたむら・としはる◎1952年、石川県金沢市出身。主にIT業界でシステムエンジニアとして従事。金沢のIT企業であるトピアシステムを経て、2016年10月より現職。「SMALL GIANTS AWARD 2020-2021」ではパイオニア賞を受賞。

文=眞鍋 武 写真=大星直輝

この記事は 「Forbes JAPAN No.079 2021年3月号(2021/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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