今回のリポートからは、新型コロナウイルスのパンデミックによって大きな変化が起きているなかでも、報酬額の上昇を後押しする基本的な要素は従来から全く変わっていないことがわかる。
具体的な数字を紹介しよう。2020年の米国では各企業が支出を厳しく制限したにもかかわらず、テック系プロフェッショナルの平均報酬額は前年比3.6%増の9万7859ドルに達している。コロナ禍を通じて、エンジニアが提供するスキルやサービスへの需要は高まっている。これには、デジタルトランスフォーメーション(DX)から、増加するサイバー攻撃への警戒強化まで、各企業があらゆる方面で対応を迫られているという背景がある。
こうした需要に加え、一般にテック系の雇用市場では供給が需要を下回るという事情も手伝って、人材の奪い合いが発生しており、これが報酬額の上昇を招いている。この現象は、サンフランシスコ周辺のベイエリアのようなテック系産業の中心地域だけでなく、新興エリアでも顕著に見受けられた。
2020年にテック系人材の報酬額が前年比で最も上昇したのは、こうした発展中の地域の1つ、ノースカロライナ州シャーロットだった。その上昇率は実に13.8%に達している。これに僅差で続くのがフロリダ州オーランドで、前年比13.4%とこちらもかなりの上げ幅を記録した。この2都市に続いて第3位に入ったのはニューヨーク市で、上昇率は11.6%だった。
新興地域の躍進やリモートワークの普及といった、2020年ならではのトピックはあったものの、ダイスによれば、高報酬の仕事を求めるならば、やはり米国でも最も名の知れたテック業界の中心地に向かうべきだという。シリコンバレーでは、上昇率こそ2.6%にとどまったものの、テック系職種の平均報酬額は12万6801ドルと、他を大きく引き離してトップの座を維持している。
また、ニューヨーク市も11.6%という高い伸び率に後押しされ、平均報酬額は11万4274ドルに達し、2位にランクインした。続く3位には、11万1069ドルのマサチューセッツ州ボストンが入った。
州単位での平均報酬額の比較では、ニュージャージー州(11万1233ドル)とカリフォルニア州(11万1228ドル)が、僅差で1位と2位に名を連ねている。