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2021.05.28 12:00

遠山正道x杉田陽平 なぜ今、企業がアートに魅了されるのか(後編)

現代美術家 杉田陽平(左)と「The Chain Museum」CEO 遠山正道(右)

現代美術家 杉田陽平(左)と「The Chain Museum」CEO 遠山正道(右)

スープ専門店「Soup Stock Tokyo」を展開するスマイルズを創業した遠山正道が新たに始めた事業「The Chain Museum」は、遠山本人が子どものころから親しんでいたアートと一般の人々を繋ぐ架け橋だ。
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一方、武蔵野美術大学在学中から活動を始めた杉田陽平は、「未知なる絵画をつくる」をテーマに、大胆かつ独特のフォルムの抽象画作品を数多く制作し、個展を開けば即完売という現代美術家のひとり。

そんなふたりが、「ポストコロナ時代におけるアートの可能性」を語りつくした。後編は、スマイルズがアート作品をトリエンナーレに出品した理由や、アートとビジネスの共通点や相違点、これからのアート活動について──。

>>前編はこちら
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企業がアート作品を制作する理由とは?


杉田陽平(以下、杉田):Soup Stock Tokyoを運営する「株式会社スマイルズ」では、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」に「新潟産ハートを射抜くお米のスープ300円」という作品を出品されていますよね。YouTubeで映像を拝見しましたが、発想がとても豊かでチェーミングでした。


スマイルズとデンソーとの共同開発による「新潟産ハートを射抜くお米のスープ300円」(c) Gentaro Ishizuka

遠山正道(以下、遠山):ありがとうございます。これはデンソーの幹部の皆さんと会食をしたときに、「デンソーってさまざまな技術をもっていたりチャレンジしている会社なのに、あまり知られていない」「息子が誇りに思ってくれない」という話をされていたんです。それで私が「デンソーさんのロボットと私たちのスープでアート作品をつくりましょうよ」と言ったのが始まりです。

なぜか私、朝4時くらいにベッドの中でまどろんでいるときにアイデアを思いつくことが結構あるんですよ。その日の朝も、スープにロボットが液体を一滴垂らして、それを美術館などの部屋の角に座っている女の人が「ズキュン!」と言う、というイメージを思いついた(笑)。慌ててスケッチを描き、会社で説明したら、社員は最初ポカーンという感じでしたが、そのうちに「ズキュン!」ならハートを射抜くのはどうか?なんてアイデアがどんどん膨らんでいったんです。

最終的には、一台のロボットアームがバルサミコ酢を発射し、もう一台のロボットアームが持っているスープに浮かんだハート型の浮き実を射抜く。次に、そのスープを弊社の社員が鑑賞者にお渡しするとき、「ズキュン!」と言うことになりました。

杉田:すごく素敵です。



遠山:デンソーの技術者の方は、私が「(ロボットアームの)肩から先は柳のように動いてほしい」「手と手は、システィーナ礼拝堂にあるミケランジェロの描いた『神とアダムの手』のような感じで」などとすごく抽象的なことを言っても、一生懸命理解して設計図に落としこんでくださった。高低差でミケランジェロのこの感じを出そう、威圧的なものと下界の人みたいな関係性をつくろうと、最後まで粘ってロボットの動きを完成してくれました。

スマイルズの社員も新潟に大勢出向いたんです。廃校になった小学校が会場だったのですが、部長も新人も一緒になって壁を白いペンキで塗ったり、普段は店でスープを売っている子たちが「ズキュン!」をどういうふうに言うか相談しあったり。「やりすぎてメイド喫茶みたいになってもよくないね」と加減をみんなで探っていました。「(鑑賞者が)教室の外を出るときに、その背中に追いズキュンしようよ!」とかね(笑)。

杉田:(笑)追いズキュン!
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取材・構成=堀 香織 撮影=山本マオ

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