トロヴァ・ページを創業したのは、元アリババ社員で、「アリペイ」の最高技術責任者も務めたジンミン・リー(Jingming Li)と、かつてアリペイで商業技術・国際製品の責任者を務めていたアン・サン(Ann Sun)だ。
トロヴァ・ページの狙いは、アーティストや講師に対して、オンラインで顧客とつながるためのツールを提供すること。スニーカーやスケートボードなどの実体のある商品の販売業者に対して「ショッピファイ」が行っていることを、経験経済(experience economy)の領域でも実現することにある。
リーはさらに、自動車修理店やレストランなどの小規模企業に関しても、動画プレゼンテーションやライブストリーミング、オンライン予約を提供することで、顧客へのリーチを支援できる可能性があると見ている。
この分野では、トロヴァ・ページは熾烈な競争に直面している。フェイスブックやインスタグラム、TikTokなどのソーシャルメディア大手は、それぞれのプラットフォーム上で、中小企業が宣伝するための方法を新たに追加している。イーベイやEtsyなどのマーケットプレイスも、中小企業へのはたらきかけを強化している。そしてアマゾンは、ライブストリームで商品を売りこめる「アマゾンライブ(Amazon Live)」サービスを開始した。そうしたプラットフォームが提供するサービスは、主に実体のある商品の販売者に向けたものだが、当然のなりゆきとして、いずれはサービス提供者向け市場でも独占を試みるだろう。
だが、トロヴァ・ページは大きな好機にサービスを開始した。フリーランスやリモートワークのためのプラットフォームである「ファイバー」と「アップワーク」は、2020年に記録的な成長を達成した。ファイバーは、2021年の売上成長率を46~50%と見込んでいる。また、アップワークは2020年に24%の増収を計上した。
この2つのプラットフォームが重点を置いているのは、テック系ワーカーやソフトウェアエンジニア、さらには編集やデザインといったスキルを持つフリーランサーで、通常は企業顧客に必要とされる職業の人たちだ。パンデミックに伴ってオンラインのリモートワークに移行する企業や労働者が増えたことで、こうしたプラットフォームの運勢は急激に上向いた。
現在は、世界中のヨガインストラクターやピアノ講師、ダンスインストラクター、家庭教師たちも、対面指導をオンラインレッスンに切り替えている。こうした状況を背景に、トロヴァ・ページもこのトレンドをうまく活用しようとしている。
リーによれば、トロヴァ・ページと競合他社との違いは、教師やアーティストなどの小規模事業者に対して、顧客へのマーケティングや事業拡大に役立つデータを収集するツールをはじめ、Eコマースビジネスの運営に必要なすべてのテック系ツールを提供する点だという。
トロヴァ・ページを創業した狙いは、クリエイティブ分野の起業家がキャリア構築に利用できるプラットフォームをつくることにあった、とリーは言う。
「体験をシンプルにして、クリエイターにとっても顧客にとっても、物事を簡単にしたいと思っています。自分のウェブサイトをつくる必要がないので、クリエイターたちは、自分が持つ才能に集中できるようになります」
トロヴァ・ページは、過去1年のあいだテストモードで運用されていた。現在のユーザー数は6000人ほどだとリーは話している。また、具体名は明かさなかったが、後援企業からのプレシード投資も受けている。