同社は当時、売り上げの大半をコンピューターや電子機器の販売店に依存し、マッキントッシュとパワーブックG3(PowerBook G3)はウィンドウズを搭載したより安価なコンピューターとしのぎを削っていた。
ジョブズと、当時世界オペレーション担当上級副社長だったティム・クックは、マッキントッシュコンピューターの販売戦略を改善すべく同社の販売プログラムを根本から変革する計画を立てた。ジョブズは、これには顧客との関係を変革し、購入者がより自律的に商品を吟味できるようにすることが必要だと考えていた。
戦略の見直しにより、アップルは1997年にオンライン店舗を立ち上げた。一方、同社初の販売店は2001年5月19日、バージニア州タイソンズとカリフォルニア州グレンデールの2カ所にオープンした。
バージニア州タイソンズのアップルストア(2011年5月撮影、Getty Images)
新たにオープンしたアップルの実店舗が失敗すると予想したアナリストもいたが、2店舗では開店した週末に約59万9000ドル(約6500万円)を売り上げた。また2004年までに同社は、新たな販売モデルにより約10億ドル(約1100億円)の売り上げを出した。
アップルストアのコンセプトは、最初の店舗の開店から20年で大きな進化を遂げてきた。同社ウェブサイトに掲載された店舗リストによると、アップルは現在、米国だけでも271店舗のアップルストアを抱え、世界中で500店舗を超える一大帝国を築き上げている。香港とマカオを含む中国の店舗数は世界2位の50店舗で、3位は38店舗の英国だった。
現在のアップルストアの配置は2001年と比べると確実に変化を遂げ、木が並べられた顧客サポートエリアの「ジーニアス・グローブ(Genius Grove)」や、ゲームやクリエーティブ系のイベントのため導入された「ザ・フォーラム(The Forum)」などが加わった。
アップルストアはアップルの殿堂としての役割を果たしているとされ、過去20年で同社ブランドの注目度を大きく向上させてきた。同社の成功にインスピレーションを得たサムスンやシャオミ、華為技術(ファーウェイ)などの競合企業も同様の戦略を採用し、自社販売店をオープンさせた。しかしこうした企業が世界の「アップルストア帝国」に匹敵するものを作り上げるまでには、まだやるべきことは多い。
アップルストアの数が多い国は次の通りだ。
(かっこ内数字は2021年5月14日時点のアップルストア数)
1位 米国(271)
2位 中国(香港とマカオを含む、50)
3位 英国(38)
4位 カナダ(28)
5位 オーストラリア(22)
6位 フランス(20)
7位 イタリア(16)
8位 ドイツ(15)
9位 スペイン(11)
その他の国 40店舗