他の追随を許さない、pastureだからできること
「ユーザーからの問い合わせは全てpastureがチャットサポートで対応します。フリーランスの方が増えており、法制度などについても多くの問い合わせをいただきますが、7分以内に返信しています」
pasture(パスチャー)の事業責任者、高澤真之介はそう語る。pastureは、企業とフリーランスとの間に発生する契約・発注・請求・支払いなどを一元管理できるクラウドのサービスだ。企業とフリーランスはそれぞれ、pasture上で契約書や発注書、請求書などのやりとりを行えるため、下請法やインボイス制度といったガバナンス対応がクリアできる。
さらに対フリーランスだけでなく、取引先企業からの請求書も受け取れる機能も開発中で、請求書を紙やPDFで受け取った場合でも、OCRで自動解析し、データ化できる機能を兼ね備える予定だ。フリーランスのタレント情報を蓄積し、必要な人材を容易に検索することもできる。
高澤のいうユーザーとはpastureを導入する企業のみならず、その取引先にあたるフリーランス全てのことを指している。300人のフリーランスと取引する企業なら、その300人からの問い合わせが寄せられる可能性を持つということだ。導入1社あたりの費用対効果を考えれば、普通のベンダーならまず引き受けないであろう件数だが、pastureはその全てに対応する。
「お客様へのサポートを徹底したことで、たくさんのご要望も集まりました。それらニーズに応じた新しい機能も開発し、随時アップデートもしています。昨年開発した新機能は150。そのうち40%はお客様の声から生まれたものです。Forbes Japan編集部からもリクエストをいただき、フリーランスへの発注金額がリアルタイムでわかる機能を開発しましたが、それをフックにプロジェクト単位の予算を可視化する機能も追加しました」
ユーザーの個々の疑問に直接応える細やかなバックアップ体制に加え、そこから引き出された要望に対応して次々と追加される新機能。ユーザー側からすれば、要望が形となって実装され、さらに使いやすく進化するため、使うほどに導入企業の満足度が高まっていくという好循環を生み出す。
この顧客満足度が、第三者評価サイトのITreviewにおいて、フリーランスマネジメントツールとして1位をキープし続け、口コミをはじめとするマーケットの高評価へと繋がっているが(2021年5月13日現在のスコアは4.5点/5点)、実は、と高澤は続ける。
「SaaSツールではある意味タブー視されている、個社ごとのカスタマイズに応じることも少なくありません。もちろん全てのご要望にお応えすることはできませんが、お客様のご要望とpastureのあるべき姿を考えぬくことで、できるだけ汎用的な仕様にアレンジしながら実装しています。」
2020年度の継続率は99%という数字を達成したという。驚くような成長率で事業を拡大させた今も、個々の顧客ニーズに丁寧に寄り添い続ける。その姿勢はどこから生まれているのか。
顧客から寄せられる意見こそが、事業の指針だった
大学を卒業したのは2017年。バックオフィスの経験はおろか、社会人としてのキャリアも短く、自分達でサービスの行き着くべき先を見出すことは難しかった、と高澤はサービスのスタート当時を振り返る。
「お客様の声が指針だったのです。逆にいえば、初心のままの素直な人間の集団であることがケイパビリティにもなっていました。だからこそ、お客様の声一つひとつにしっかりと耳を傾け、ご要望に応えられるサービスを作ってきました。今でこそチームは大きくなりましたが、初めは将来の構想よりも、目の前のことに必死でした」
顧客の声にひたすら向き合い、徹底的に応えてきたからこそ今がある、と高澤は断言する。だからこそ、寄せられる声に真摯に耳を傾ける姿勢は、事業が拡大した今も崩さない。
ユーザーから寄せられる膨大な問い合わせの内容は全て、リアルタイムで社内のデータベースに保存している。そこから適切な回答を引き出すことで、7分以内というスピード対応を可能にし、さらに要望はランキング形式に整理され、ニーズの多い順に新たな機能として開発し続けている。
次々と新機能を追加し、アップデートを続けるpastureは、もはや単なる業務効率化ツールにはとどまらない。
「もともと、組織を変えられるようなコラボレーションツールのつもりで開発をしてきました。業務効率化サービスだけではお客様に対して出せるバリューも少ないのです。コロナ禍の中、お客様もpastureをさまざまに活用してくださっています。そんなお客様から寄せられたご意見をもとに、目指すべき姿はずっと進化し続けています」
顧客ニーズに寄り添い続けて見えてきた新たなプロダクト像
今は先の見えない、不確実性が高い社会だ。事業のあり方や働き方は大きく変化し、雇用が流動的になって、フリーランスや副業という働き方も増加した。これまでのケイパビリティに頼っていては事業の成長が見込めなくなった企業は、柔軟にケイパビリティを変革することが迫られている。そのため多種多様な人材とプロジェクトベースで関わる必要性が増えている。pastureは、そうした世の中の流れにもうまくマッチしている。
昨年寄せられた声には、コロナ禍によって社内で新しいプロジェクトが数多く生まれたというものが目立ったという。予算の割り当てや管理、最適な社外スタッフをデータベースから探すことも容易なpastureを使うことで、プロジェクト型組織のスタイルによる事業運営を可能にする。
アフターコロナの時代に高澤が見据えているのは、事業部単位で仕事をする企業ではなく、プロジェクトベースとなった組織が成長をしていく未来だ。外部のスキルやナレッジをこれまでの組織にプラスし、既存事業の枠組みを超えてコラボレーションすれば、可能性はより広がる。柔軟なプロジェクト型組織はコロナのような危機において、事業の継続性を向上する。その組織運営を支援するpastureもまた、多くの可能性を秘めている。
「コロナ禍で業績が厳しい企業も多い中、pasture利用企業の実に25%が、フリーランスを増やし、プロジェクト経営を推進して、事業をグロースさせています。そうした企業が多いため、pastureは継続率も高い水準を保っています。」
たとえば、バスケットボールを指に乗せてボールを回そうとするとき、ボールをある程度早く回転させ、流動性を高めればボールは安定する。事業もこれと同じで、流動性のある経営は安定しやすく、固定費の割合が高ければ、倒産リスクに直結する。ポストコロナの時代、企業に求められるのは流動性であり、プロジェクト型組織なのだ。
「これからは正社員やフリーランスの枠組みを超え、雇用形態にとらわれないプロジェクト型組織の運営を行うことで、企業も個人も一緒に成長する社会になっていくでしょう。pastureを通してプロジェクト型組織を支援し、企業社会全体の継続性を高めるお手伝いをしていきたいと思っています」
高澤 真之介◎pasture事業責任者。2017年に株式会社セールスフォース・ドットコムに新卒入社。その後エン・ジャパン株式会社に入社し、過去に自身もフリーランスとして働いていた経験から、フリーランスマネジメントシステム「pasture」の立ち上げに参画。