では、新しい職場で働きはじめるとき、どんなコミュニケーションを心がければいいのか。具体的に、何からはじめたらいいのか。あるいは、何をコミュニケーションの目標にすべきなのか。
そんな悩みに答えてくれるのが、自らも2度の転職経験を持ち、プレゼンテーションやリーダー教育の専門家としても知られるZホールディングス アカデミア学長で、50万部を超えるベストセラー著書『1分で話せ』もある伊藤羊一氏だ。
新著『ブレイク・セルフ』(世界文化社刊)で語られている、仕事で自分を表現し、それによって人とつながるための思考と技術。そのエッセンスを、新しい職場でのコミュニケーションにどうやって活用するか。以下は、Forbes JAPAN読者に向けた、明日から使える具体的なアドバイスである。
「最速で結果を出す」ための5ステップ
異動や転職をきっかけに、新しい職場で働きはじめる。そこで、どういうコミュニケーションをとったらいいか。この悩みは要するに、「新しい職場で最速で結果を出す方法」を考えることだと僕は思う。そして、この「方法」は明確に存在するし、共有できるとも思っています。
ここでは端的に、5つのステップで説明しましょう。
その前に、前提として押さえないといけないこと。それは、新しい職場については、当然ながら情報がない。「よく知らない」ということです。では、どうやって情報をゲットするか。
ここで、「じゃあ、最初にやることは、新しい職場の人に話を聴くこと。ヒアリングだな」と考える人が多い。でも、実は、そうではないんです。
新しい職場については、情報や知識がないだけではありません。人間関係もまだないんです。人間関係がない中でどうやって情報を得るか、ということを考えなければいけない。
そこで、最初にやるべきことは、以下です。
1. 仮説を立てる──「イシューを定める」こと
仮説を立てるとは、簡単に言うと、「この職場は、きっとこういうことで悩んでいる」「ということは、自分はこんなふうに動いたらいいに違いない」といったことを考えてみることです。情報がないところで考えるので、仮説というよりも単なる「想像」に近いかもしれない。でもまずはそれでもいいので、与えられた情報の中で精一杯考えておくことが大事です。
仮説を立てるときのコツを紹介しておきましょう。まず、
a. 状況はどうなのか
b. 課題は何か
c. どうすればいいのか
を考えます。つまり、今の職場の環境を押さえたうえで(a)課題はなにか、つまりイシューを定める(b)。そして、イシューから自分のやるべき行動を導く(c)ということですね。