ビジネス

2021.04.29 17:00

米国の銀行間送金を爆速化するフィンテック企業「Orum」の挑戦

「Orum」創業者のStephany Kirkpatrick /(C)Orum

ネットフリックスで映画を視聴する際、読み込みに掛かる時間はほんの数秒だ。また、ウーバーを使えば数分で車を呼ぶことができ、食料品の配達を依頼すれば1時間後には届けてくれる。送金も同じように迅速にできると思うかもしれないが、安全性を確保するため、ほとんどの場合は車よりも遅いスピードで行われている。

米国では、年間62兆ドルが5日をかけて送金されているのだ。このため、消費者はロビンフッドやChimeのようなデジタルバンクに登録してから利用できるまでに数日待たなければならない。

ニューヨークに本拠を置く従業員40名のスタートアップ「Orum」は、送金に要する時間を24時間に短縮しようとしている。同社は、ベインキャピタルが主導したシリーズAラウンドで、2100万ドル(約23億円)を調達したことを明らかにした。このラウンドには、他にInspired CapitalやHomebrew、Acrew、Primary、Clocktower、Box Group、Amex Ventures、SVB Capitalが参加した。

Orumは、2019年にStephany Kirkpatrickによって設立された。Kirkpatrickは、Alexa von Tobelが設立したファイナンシャル・プランニングを手掛けるフィンテック企業LearnVestに7年務めた経歴を持つ。LearnVestは、2015年に3億7500万ドルでNorthwestern Mutualに買収された。Kirkpatrickはファイナンシャルプランナーの資格を持ち、LearnVest時代には、同社初のコールセンターをアリゾナに開設したり、ファイナンシャル・プランニング用ソフトウェアの設計に携わった。

「LearnVestでは、600〜700万人もの人々がファイナンシャル・プランを受け取りながら、実行したのは10%に過ぎなかった。その理由は、我々の金融システムにある。人々は、高利回りの貯蓄はメリットが大きいことを理解しながらも、利用したがらなかった。なぜなら、緊急時に引き出したくても、時間が掛かるからだ。それ以来、私は送金時間を迅速化することに取りつかれた」と39歳のKirkpatrickは話す。

Von Tobelは、Kirkpatrickにとって最初の資金提供者だ。Tobelは、自身のベンチャーキャピタル・ファームであるInspired Capitalを通じてOrumに出資をした。「この問題は、非常に大きく、複雑で、示唆に富むものであり、数多くの企業にとって悩みの種だ」とTobelは話す。

Kirkpatrickは、多くの取引が迅速に決定するのに対し、送金には長い時間を要するという問題を解決するためにOrumを設立した。オンラインでクレジットカード番号を入力したり、店頭でスワイプすれば、小売店はすぐに承認されたかを把握できる。カードネットワークは迅速だが、高額でもある。小売店は、カード決済手数料として売上金額の2%程度を徴収される。
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編集=上田裕資

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