一方で、給与振込や請求書の自動支払い、銀行振込のようなACH(Automated Clearing House)ネットワークを使った送金の場合、手数料は30セントだが5日を要する。ACHは、1974年にスタートし、金融機関で構成される非営利団体であるNachaが運営している。
ACHの課題は、送金が遅いだけでなく、データ量が少ないことだ。あるユーザーがChimeに登録し、自身の銀行口座から2000ドルを送金しようとした場合、Chimeはそのユーザーの口座に2000ドルがあるかわからないため、トランザクションが行われるまで待つ。
機械学習を用いたリスク査定
これに対し、Orumには“Foresight”と呼ばれるプロダクトがあり、提携金融機関からデータを取得し、機械学習を用いてトランザクションのリスクを精査する。Orumは、この機能を用いることで、例えばある銀行振込が99%の確率で安全であることを顧客に伝えることができる。この情報を受け取った銀行は、従来より格段に速く送金を行うことが可能になる。
多くの場合は同日に送金が完了し、ユーザーエクスペリエンスが大幅に向上する。「この数年で機械学習が進歩したことで、リスク精査が可能になった」とKirkpatrickは話す。
現在、Orumは15社にサービスを提供しており、その中にはデジタルバンクのSoFiや、メンフィス本拠で157年の歴史を持つFirst Horizonが含まれる。これらの企業は送金の85%を迅速化し、これまで3〜4日を要していたのが、1日で実行できるようになったという。
また、NSFが40%削減されたという。NSFとは、残高不足によって小切手が不渡りになったり、自動引き落としが不能になることだ。通常、NSFが生じると消費者は35ドル、金融機関は5ドルの手数料を支払わなければならない。NSFが多く発生すると、Nachaは銀行やフィンテック企業をACHネットワークから遮断する。
Orumの2つ目のプロダクトである“Momentum”は、金融機関が求める速度やコストに応じて利用するネットワークを選択してくれる。ある消費者が送金依頼をすると、MomentumがACHやクレジットカードネットワーク、銀行のReal Time Payments Network、ブロックチェーンを用いた支払いシステムなどの中から最適な送金ルートを選択する。