オンライン時代の会話の極意、「何を話さないか」を決めておく

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オンラインで顔を見ながらコミュニケーションを取るのは特別なことではなくなった。しかし一方で、顔を見られている関係は疲れるという声も聞く。

日本ではすでに落ち着いてしまったが、Clubhouseなど音声SNSに注目が集まるのもこうした状況だからだろう。口と耳だけの会話は気が楽なのだ。とはいっても、気が緩みすぎれば質の高い会話は生まれない。これは、“顔出しをしない”ミーティングや、相手の顔が見えないオンライン配信などにも言えることだ。では、どうしたら心地よいコミュニケーションの場ができるだろうか。参考になる優れた話し手の会話のフォームを紹介しよう。

「何を話さないか」を決めておく


まず、顔を見せていないと私たちは、話すときに油断してしまう。このことを肝に銘じよう。

そもそも、一人だけで話せば、話す内容は決められる。しかし、複数の人が参加する場では、会話の流れで問題が変わることは避けられない。その過程で、冗談のように言った比喩などが、真剣にとられることもある。顏が見えないと、笑いなが話しているのか、実は真剣なのか、そのニュアンスが十分に伝わらないからだ。

そして、放った言葉が意図しない解釈で思わぬところに広がらないとは限らない。その責任は話し手にある。

だから、話す内容は、そのときどきで考えるのではなく、会議やSNSなど、公開される範囲に合わせることがポイントだ。何を話すかより、何を話さないかを、あらかじめ決めておく。そうすれば、勘違いされることはなくなる。

「楽」すぎていないか?


優れた話し手の会話にはメリハリがある。聞いている人を飽きさせないように工夫をしているからだ。テーマの選択が重要なのはもちろんだが、会話においては話す相手の選び方にも気を配っていることが多い。

同じ意見をもった者同士で話し合うと、つい会話が「単調」になる。しかし、互いのコンフォートゾーンにいるため、自分では気付けないことが多い。ときにその雰囲気は、違う意見の人を遠ざけるような同調圧力にもなりかねない。

話していて「楽だな」と思ったら、異なる意見を取り入れるようにする。すると、ほどよい緊張感が生まれ、聞き手も飽きにくくなるだろう。

会話に「問い」をみつける


オンラインライブでもClubhouseでも、話がなんとなく記憶に残らなかったということはないだろうか? それはおそらく、会話にフックとなる「問い」がないからだ。

問いとは、聞き手から質問の形でもらうものとは限らない。ときに自分で用意しておくべきもの、あるいは話の中で見つけるべきものだ。

その問いを設定するコツが、ありきたりなものにしないようにすることだ。なぜ、相手がその問題に注目したのかに丁寧に聞き出すと、個人の出来事にも、実は大勢と共有できるヒントがあったりする。そうして共感できるポイントがあると、話が印象に残りやすくなるというわけだ。

これからも様々な新しいタイプの話の楽しみ方が生まれるだろう。それを利用して、自分の話しかたの癖を知り、会話のフォームを進化させていきたいものだ。

連載:表現力をよくするレシピ
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文=中井信之

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