図1新たな価値に関する整理図
まずいちばんわかりやすい方向性は、これまで経済指標として使われていたようなGDP(国内総生産)を拡張し、それが取りこぼしていたいろいろな要素を付け加えた新しい指標をつくるものだ。例えばSDGs(持続可能な開発目標)や、その前のミレニアム開発目標、国連の人間開発指数などだ。
しかし、まだ十分に取り込めていない要素はある。この図で言うと、右上のようなSDGsでいま注目されている環境や持続可能性の文脈だけでなく、一般的な経済的価値のなかでも取り込まれていない価値があるのがわかる。
わかりやすいところで言うと、左上の再利用や中古品、シェアすることの価値。さらに、デジタル側では、図の右下の部分で、デジタルかつ社会、文化的なもの。典型的には、フェイクニュースや陰謀論、誹謗中傷など、デジタルなコミュニケーションインフラの機能不全で流通している情報の質や信頼性が落ちたりしているケースだ。デジタルな情報とコミュニケーションの問題は、私たちの「幸せ」の感じ方にも大きく影響を与えているのに、既に存在している価値指標のなかには組み込まれてなかった。
このように、既存のGDPでは取りこぼれた指標が多々あり、その取りこぼされている要素をどのように組み込んで、価値尺度や成果目標をつくっていくかが問題になる。
今後、期待したいのは、民間主導の新しい価値尺度をつくっていく動きだ。最近では、国より民間のほうがデータをもっている。民間主導でオルタナティブな価値指標を提案して、彼らがもっているオルタナティブデータで測っていくのが理想だ。既存の経済統計のあり方を、21世紀風にアップデートする試みがもっと社会運動化していくといいだろう。
より幅広く、より多様な価値観を組み込んだ成果目標や、価値指標のつくり方というのを、国とか国際機関だけでなくて、民間もかかわりながら、社会全体でつくる必要がある。