そう語るのは、自宅で行えるホルモン検査サービス「canvas」を提供する、Vitalogue Health(バイタログヘルス)のCEO、長谷川彩子だ。日本医療政策機構の調査によると、日本で婦人科系疾患を抱える働く女性の年間の医療費支出と生産性損失の合計は、少なくとも6.37兆円にのぼる。バイタログヘルスは、ホルモンを検査することで女性が自分の身体を知り、女性の生き方の選択肢を増やすことを目指す。
大学院まで薬学部を専攻した長谷川は、もともと研究者志望。ビジネスとサイエンスをつなぐ役割に引かれてアクセンチュアに入社。イギリスでMBAを取得し、帰国後ゴールドマン・サックスで勤務した。
ハードな毎日が続くなか体調を崩したのが2016年。そのとき受けた検査で、ホルモンの検査が女性の健康状態を測るのに大きく役に立つことを知った。ホルモン検査がもっと手軽に受けられるようにしたいと考えた。
同社の手がける検査キットは、toC向けが基本だがtoBでも既に試験的に導入されている。検査は指先から採取した血液を数滴染み込ませたろ紙を提携している検査会社へ送ると、ウェブで結果を閲覧できる。
「周辺論文を読み漁り、技術を掛け合わせ、自分で血液分析を行い、解析してこの検査を開発しました。機械学習も取り入れています」
日本における婦人科診療のメインストリームは、がん・不妊治療・お産であり、婦人科系の不調は、いままで注目が十分されていなかった第四の分野であり「女性医学」とも言われている。この分野への挑戦に、多くの医師からも賛同を集めている。
「自分の身体を知った上で、一人ひとりがもっと自由に自分らしい生き方を選択していける社会を作ることがゴールです」
長谷川彩子◎東京大学大学院薬学系研究科卒。London Business School MBA修了。薬剤師。アクセンチュアを経て、フリーランスとしてスタートアップ投資案件、戦略立案に取り組む。その後、ゴールドマン・サックス証券にてアドバイザリー業務に従事。アカツキの投資プロジェクトを経て、2020年Vitalogue Healthを起業。