アップルやテスラモーターズの“現地語化”を支える翻訳会社とはどのような会社なのか?
グローバル化がすすむいま、企業がアプリやサービスの海外展開を目指すのは当たり前のことだ。そうしたこともあり、各国語への翻訳アウトソーシングは、年間350億ドル(約4兆2,000億円)規模の市場に成長している。だが、各社は一様に“現地語化”に四苦八苦している。
その理由は、翻訳とテクノロジーの両方にある。一般的に、企業は大手の翻訳会社に翻訳を依頼するが、高額であるうえ、そこからさらに下請けの翻訳会社や翻訳者に外注されるため、納期や正確性が安定しない。
また、仮に「ホーム」といった英単語がある場合、それが「自宅」を指すのか、それともウェブサイトのトップ画面を意味する「ホーム画面」なのか、判別が容易ではないことも。
そうした問題をまとめて解決しようとする新興企業がある。2009年創業のニューヨークを拠点にする翻訳IT企業「スマートリング」だ。同社は、“翻訳のハブ”となることで、上記のような問題を防ごうとしている。
例えば、SNS「ピンタレスト」が30カ国語でサービスを始めようとしたとき、スマートリングのシステムは、まずピンタレストの情報を回収し、契約している翻訳者に配信。翻訳者はそれを独自のオンライン編集システムで翻訳した。
次に、アメリカの編集者や弁護士が翻訳を確認し、それを翻訳者に戻す。その過程で表記は統一され、新しい翻訳者が加わり、作業スピードは高まっていく。
そして最後に、スマートリングが顧客のシステムを通して最終データを上げるなど、最初から最後までワンストップで済むのだ。
「スマートリングは私たちと同じような速さで仕事をしてくれます」と、ピンタレストの海外展開マネジャー、シルビア・オビエド=ロペスは信頼を寄せる。実際、ウェアラブルカメラ「ゴープロ」の6カ国語での発売をたったの3週間で実現している。
スマートリングはほかにも、配車サービスアプリ「ウーバー」や音楽配信サービス「スポティファイ」、自動車会社「テスラモーターズ」など、国内外に300以上の顧客を抱えている。
14年の売り上げは推定2,500万ドル。新しい顧客に、総合テクノロジー企業の「アップル」が加わったこともあり、投資家からの期待も高まっている。