2021年4月2日、異例づくしのローカル発アニメ「やくならマグカップも」がCBCテレビで始まり、BS11、TOKYO MX 、MBS、AT-Xでも順次放送される。制作は国民的な人気を誇る「ちびまる子ちゃん」などで知られる日本アニメーションが手がける。
原作は、舞台・岐阜県多治見市に本社を置くIT企業発行(季刊、5000部発行)のローカルフリーコミック。コミックファン向けに東京や大阪などの一部で配布されてはいるが、地元多治見市内を中心に配られている超ローカルコミックである。全国的に話題になったことはこれまで一度もなかった。
放送の中で舞台としてリアルに街が描かれている多治見市では「経済効果が期待できる」と自治体を挙げて様々な観光企画に取り組んでいる。
JR多治見駅では「やくも」の横断幕が観光客を迎える
発行部数も少なく、売れる確たる保証のない、超ローカルコミックのアニメ化。放送決定の裏側を関係者に聞いた。
構想から10年目のチャンス、地元の熱い想いが引き寄せたアニメ化
「やくならマグカップも」通称「やくも」が創刊されたのは2012年。
主人公の高校生「姫乃」が陶器で有名な街「岐阜県多治見市」へ引っ越してきたことから陶芸と出会い、仲間たちと共にその魅力に引き込まれていくといった青春ストーリーである。
IT企業「プラネット」(本社:岐阜県多治見市)の小池和人会長の発案により、地元有志・企業の協力のもと企画発行された。
株式会社プラネット(本社:岐阜県多治見市)の小池和人会長
当時小池会長は年々元気のなくなっていく故郷をなんとかできないものかと、師である故・堀貞一郎氏(東京ディズニーランド開業時総合プロデューサー)に相談。そこで「人を呼ぶため、人に行動を起こしてもらうためには物語が必要」と教えられ、地場産業である「陶器」をテーマにした物語がつくられた。
「地元に根付く物語」にするためと、構想に2年の歳月をかけた。コミックを読んだ人に多治見市の魅力が伝わるようリアルな街づくりと、キャラクターを通して伝統文化である『陶芸』の魅力が伝わるように人物構成にもこだわったからだ。その後創刊から8年間という長期にわたって続けられたのは「この物語がやがて『人を動かし』地元多治見市の活性化につながると信じているから」と小池会長は語る。
では全国的にほとんど知られていないこの作品が、なぜ日本アニメーションの企画に上がったのか。