質問は、無料の会員登録さえすれば誰でもすることができ、僧侶からの回答には、ツイッターなどSNSにある「いいね」の変わりに、「有り難し」ボタンを送ることができる。また、そのとなりには、寄付金の支払いができる「おきもち」ボタンが設置されており、回答者である僧侶への寄付やサイトの運営費、災害義援金などに当てられるという。
僧侶からの回答の下にある「有り難し」ボタンと、「おきもち」ボタン(画像提供:ロータスリーフ)
「僧侶にとっては、『おきもち』ボタンからの寄付以外にもhasunohaでの回答を見て、良い回答と思ってくれた人が檀家になってくれることもあるようです」と古田氏は言う。
「現在は、法事やお葬式がないとお寺と接する機会がない、という人は多いと思います。お寺や仏教にカジュアルに接することができるこうしたサービスは、大ヒットというわけではないですが、わりとニーズを掴んで定着していると感じます」(古田氏)
現在、多くの地域のお寺で檀家離れが進んでおり、そうした厳しい現状にいる僧侶にとっては、新たな檀家を獲得できるチャンスの場になっているのかもしれない。
死別体験から救われる行為「供養」におけるIT化も
死別の悲嘆を支えるhasunohaの回答を読み込むと、「供養」という言葉に幾度と出合う。この、供養のIT化というのも実はさまざま進んでいるのだと古田氏は言う。
供養×ITで浮かぶのは、大分県九重町にある金剛宝寺の住職が取り組んでいる「どこでもお墓参(ぼうさん)」だ。個々の法事をユーチューブで限定配信する檀信徒向けのサービスで、2016年1月から提供している。
「元々は、『足腰が悪く外へ行くのが難しい高齢者に向けて、ユーチューブなどの動画配信サイトで法事をライブ中継する』という目的で始まったサービスで、檀家さん同士の口コミでじわじわと広がっているそうです」(古田氏)
オンライン法要と聞くと、コロナ禍により広まった「オンライン葬儀」を思い起こす人も多いだろう。確かにオンライン葬儀はコロナ禍よって広まり、選択肢の一つとして末席に加わるようになった感がある。現在も一般的化したとまではいえないが、着実に浸透しているのは確かだ。
お墓参りの需要だけが増加している理由
日本は戦後から現在まで、家族や親族など血縁関係のつながりというものがだんだん薄まり、個人主義的思考が強くなってきた。
しかし、意外なことに、供養に関連する行為において「お墓参りの頻度は上がっている」と古田氏は言う。
2018年、NHKが調査した「日本人の意識」調査にある「宗教的行動」の統計。上から3番目の「ウ.お墓参り」の項目は特に回答数が多いことがわかる。
「おそらくは高齢化に伴い、死別経験をしている人が増えたためだと考えられます。死別経験をして、宗教性は問わず、故人を偲びたい想いに駆られる。その対象物としてお墓が選ばれているのかなと思います。数値のなかには『親族との付き合いで』という人も含まれるでしょう。けれど、追悼する拠点、供養する拠点がほしいというニーズは確実に高まっているように思います」(古田氏)