感染者数が急増した厳しい冬を超え、ワクチン接種も進む中での春の到来は、「通常」の生活に戻りたい気持ちをさらに強くさせるが、彼らによれば、それは私たちがいま持つべき願望ではない。公衆衛生の専門家たちはそろって、「今は緩めるべきときではない」とのメッセージを発している。
「波」ごとに薄れる警戒感
欧州では現在、新型コロナウイルス感染の第3波が起きている。感染者数は増加が続いた後にプラトー(横ばい)の状態に達するが、それが繰り返されるたびに、私たちの感覚はまひしていく。新規感染者も死亡者も増え続ける現状に、私たちは慣れてしまうのだろう。プラトーの状態で気を緩めて活動を再開すれば、感染者数はまた急増し始める。
昨年の春までにイタリアで起きたことは、私たちの将来を示していたといえるかもしれない。その状況を振り返るとともに、今後起きる可能性があることについて、考えてみたい。
昨年の今ごろ、イタリアは感染者の増加の第1波を経験。最も多い時期で、1日に6200人程度の感染が新たに確認されていた。その後、春から夏にかけて新規感染数は減少。だが、ゼロに近づいたわけではなく、1日の新規感染者数は300人前後だった。
秋になると、感染者数はまた急増。1日当たり約4万人が確認されるまでに増加した。パンデミックを制御できないとき、起きるのはこういうことだ。今年1月には、一部地域で再びロックダウン(都市封鎖)を実施することになった。
2月にかけて、1日の新規感染者数はプラトーに達したものの、その数は約1万2000人だった。プラトーの状態になったことで、イタリアはまた制限措置を解除。だが、その後も感染者数の横ばいは続いただろうか──? 3月中旬現在、同国は再度ロックダウンを行っており、1日の新規感染者数は2万6000人を超えている。