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2020年はBTSにとって驚異的な年と言ってよく、彼らの創造力がピークに達し、商業的にも世界をリードする立場になった。グラミー賞の主要部門である〈年間最優秀アルバム〉〈年間最優秀レコード〉〈年間最優秀楽曲〉〈最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム〉の有力候補になっても少しもおかしくない。それなのに、レコーディング・アカデミーはBTSのとても冒険的とは言い難い曲をマイナーな部門にノミネートしただけだった。

まるでこう言っているようだ。「なるほど、きみたちの不満はそういうことなんだね。では、きみたちが欲しがるものをあげようじゃないか。だからBTSについては口をつぐんでいてくれるね?」

グラミー賞がこれまでに取ってきた人種問題に対する無関心な態度を見れば、この対応もまた意外ではない。

賞が創設された1959年以来、〈年間最優秀アルバム〉を受賞した黒人は10人だけで、白人以外のアーティストは人種枠に配慮して賞を与えても、特別な部門かノンジャンルの部門でしかなかった。つまり、もともとBTSが3月14日に受賞する可能性は薄かったわけで、本人たちもファンもそれはわかっていたのだろう。


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「失敗」を悔やめ、レコーディング・アカデミー


レコーディング・アカデミーは彼らの敗北感を薄めるためにBTSのパフォーマンスを延々とこれみよがしに流したが、そもそもBTSに〈最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞〉を与えるつもりはなかったように思える。

レコーディング・アカデミー側の言葉が聞こえるようだ。「だけどな、視聴率のためにはあのグループの出演が必要なんだよ。彼らだって、グラミー賞授賞式のステージに(ヴァーチャルで)出演するよう招待されれば名誉に思うさ」

BTSはいつものように冷静に敗北を受け入れ、最後は韓国の地平線を背景に、ソウルの華麗な夜景を見下ろす屋上での素晴らしいパフォーマンスを披露した。グラミー賞という大舞台に出る機会を最大限に利用し、またもや自分たちがこの業界で最も勤勉で、カリスマ性に富むアーティストであることを証明してみせた。

彼らのスターとしての力量に疑問の余地がないのは、昨年10月に行った「Map of the Soul:7」ヴァーチャル・コンサートで192カ国100万人の有料ビューアーを集めたことでもわかる(ここで答える必要のない質問をひとつ──あなたは、100万の人々がグラミー賞の中継を見るために50ドルとか100ドルを支払うと思いますか?)。

音楽業界の進歩? たとえ進歩があったとしてもそのスピードは氷河並みに遅い。それでもきっかけさえつかめば、BTSが次回のグラミー賞で主要な部門にノミネートされ(そして受賞する)可能性が決してないわけではない。近頃ボイコット宣言をされ、有力なアーティストからの賄賂問題にも悩まされているレコーディング・アカデミーはもっとBTSの力を認めるべきだ。それがたとえ、面目を保つためだったり、破滅への道を進む速度を遅らせるためであっても。

もっともレコーディング・アカデミーが態度を改めなくても、BTSとそのファンは思い悩む必要はない。損をするのはレコーディング・アカデミーのほうなのだから。

翻訳・編集=S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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