建築の動機は「余暇に釣りをし、ビールを飲むこと」
この物話の登場人物は、成功を収めた若手実業家の男性で、「海岸線」を意味する「コーストライン」というあだ名で通っている。その由来は、この男性が海育ちであること、そして、南シナ海に浮かぶ大きな島々のひとつ、東山県で、魚釣りを楽しんだり美しい夕日を眺めたりして大半の時間を過ごしてきたことにある。
コーストラインは、余暇ができるとほぼ魚釣りをしていた。漁師の気楽な生活に魅了され、同じような暮らしをしたいと願い続けてきた。
2018年のある夜、親友で建築家のドン・シンメン氏と一緒にくつろいでいたときのことだ。コーストラインは、理想的なフローティングホームに関するアイデアについて話し始めた。彼は、自らの人生や計画を振り返りつつ、立ち寄って釣りに出かけたりビールを飲んだりできるような家がほしいと思っていた。
ふたりは杯を重ね、話が尽きる頃には、コーストラインが構想した非の打ち所のないフローティングホームを建てる計画を固めていた。
移動はモーターボートで
水上に家を建てる作業は簡単とはいえない。作業員に任せていたところ、家の土台が上下に波打ち、さらに強風にあおられて状況が悪化した。
鉄骨で構造を安定させたうえで、できるだけたくさんのガラスを使ったデザインにしたいと考えていたが、頑丈さと耐久性を備えるために外観を妥協せざるをえない、と最終的に判断した。
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コーストラインとその作業員らによるチームは、当初、家屋を最寄りの水力発電所の施設に係留していたが、漁船が何度となくケーブルを通過して切断してしまった。そのため、コーストラインは漁師たちに、ケーブルを切らないようにしてほしいと説得した。
この立派なフローティングホームは、金属製の錨(重さおよそ1トン)を16基使って支えられており、位置を保っている。家屋を移動したければ、この錨を上げ、モーターボートで新しい場所まで曳航してもらうだけでいい。
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