サッカーW杯が開催されるカタールで、外国人労働者が多数死亡

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中東のカタールでは、ここ10年間で何千人もの外国人労働者が死亡していることが、英紙ガーディアンの報道で明らかになった。カタールは2010年12月に、国際サッカー連盟(FIFA)が主催する2022年ワールドカップの開催国に選出された。しかしそれ以降、南アジアの5カ国からカタールに出稼ぎに来ていた外国人労働者のうち、少なくとも6500人が死亡しているという。

ガーディアンの分析は、インド、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、スリランカからの労働者について調査したものだが、2010年以降の死者数は週平均で12人となっている。ただし、実際の死者数はそれを大きく上回る可能性が高い。ガーディアンの調査には、フィリピンやケニアなど、カタールに多数の労働者を送り出していることで知られる国々が含まれていないためだ。

カタールは、アラブ首長国連邦やサウジアラビアといったほかの湾岸諸国と同様に、アジアやアフリカの一部の国々から自主的に出稼ぎにやって来る外国人労働者に大きく依存している。2017年はじめのカタールの人口はおよそ260万人だったが、そのうちカタール国民は31万3000人、外国人は230万人だった。

かねてから、カタールでは労働者の人権侵害や暴行などが横行していると報道されており、国際機関は一貫して、外国人労働者が深刻な搾取や虐待にさらされていることを訴えている。米国務省によれば、外国人労働者は強制労働に等しいと見られる状況に置かれ、殴打や賃金未払い、性的暴行、移動の制限といったかたちで権利が侵害されているという。

サッカーの世界的祭典であるワールドカップに向けた準備として、カタールは数々の大事業に着手しており、スタジアム7カ所や空港の建設、公共交通機関の大幅拡張などが進められている。ガーディアンの報道によれば、死亡した外国人労働者のうちの37人は、スタジアム建設地での作業に直接起因している。

とはいえ、死者の統計は職業や勤務地で分類されていないため、死因の解明は難しい。2011年以降の何千件にも上る死亡例のうち、かなりの割合が、ワールドカップに向けたインフラ建設プロジェクトで起きた可能性が高いと見られている。

公的な記録ではさまざまな死因が挙げられており、高所からの落下による鈍的損傷(強い打撲)や窒息なども含まれている。しかし最も多いのは、心不全や呼吸器不全を主とした「自然死」だ。こうした事例については、合理的な医学的説明がなされていないのがほとんどだが、カタールの猛烈な暑さが関係している可能性がある。

政府筋の情報をまとめたガーディアンの報道では、2011年から2020年のあいだに、インド人労働者が2711人死亡したことが明らかにされた。また、ネパール人労働者の死者数は1641人、バングラデシュ人労働者は1018人だった。在カタールのパキスタン大使館も、過去10年間で824人のパキスタン人労働者が死亡したことを発表している。

こうした数字について、カタール政府は反論こそしていないものの、死者数は外国人労働者の多さに比例すると述べている。カタールは、新型コロナウイルスの感染者数が少なく、労働者たちの死者数にさほど大きな影響は与えていないものとみられる。カタールにおける新型コロナウイルスによる死者数は3月月初で、260人ほどとなっている。

カタールで2011年から2020年末にかけて死亡した南アジア出身労働者の国籍別データ


国/死亡者数

インド 2711人
ネパール 1641人
バングラディシュ 1018人
パキスタン 824人
スリランカ 557人

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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